海外で稼ぐ割合が増えた日本企業は、目まぐるしく変化する世界情勢の影響をまともに受けるようになっている。いっときの成功に酔いしれている暇はない。2015年、新しくトップに就任した男たちはどんな戦いを挑むのか。

変化に対応できるものだけが生き残る

ホビー業界トップ企業のリーダーは、故郷の秋田で教師になるはずだった。1年限定のつもりで入社し、「ガンプラ」の営業担当になったが、上司は「実力不足」を理由に外回りをさせなかった。「認められたい」の一念で奮起。以後、子供服や化粧品など多くの新規事業に関わった。多くの失敗も経験。石川祝男現会長からの社長打診は「まったく想定していなかった」という。

――自分の失敗をきちんと語れる経営者は珍しい。何を学んだか。
バンダイナムコホールディングス社長 田口三昭氏

【田口】最初の配属先だった模型事業部の上司から「常に最悪の事態を想定して仕事をしろ」と叩き込まれた。そのおかげかもしれない。1986年に立ち上げた「トンカワールド」という子供服ブランドでは、6年で累積6億円の赤字を出し、撤退した。お客様の声を拾いすぎて、オリジナリティを出せなくなってしまった。お客様の意見に100%流されるようだと、事業の壁は突破できない。お客様の思いの少し先を満たすことが、我々の仕事だと思う。

――新規事業のポイントは何か。

【田口】成功体験は、むしろ邪魔になることが多い。とくに自分流の体験を部下に当てはめるのは非常にナンセンスだ。多少の口は出すが、失敗にせよ成功にせよ、部下がどれだけその仕事に執着できるかどうかは、上司の姿勢如何だ。とにかくバットを振らせる。チャレンジの場を与えることが必要だ。

――ナムコとの統合効果を出せない時期が長かった。

【田口】それぞれの企業文化を軽んじたところがあったと反省している。バンダイ側はキャラクターの旬を逃さず多方面にすばやく展開する。一方、ナムコ側は遊びを根本から考えていいものをじっくり作り込む。この2つの企業文化を融合させるのに10年がかかった。互いのやり方に触発され、ようやく統合効果が出てきた。キャラクターやターゲットによって、それぞれのやり方の比重を変えていければと思う。