「官邸に向けてドローンを飛ばした」

【事件】2015年4月22日午前10時過ぎ、東京・千代田区の首相官邸屋上に、小型無人飛行機(ドローン)が落ちているのが見つかった。直径約50センチでプロベラが4つあり、福島で採取した放射能土入りの容器が取りつけてあった。警視庁は25日、福井県小浜市の無職、山本泰雄容疑者が「4月9日、反原発を訴えるために官邸に向けてドローンを飛ばした」と地元の警察に出頭してきたところを威力業務妨害の疑いで逮捕した。

ドローンの事故はこれが初めてではないが、場所が首相官邸だったことから大きなニュースになった。また当時、立て続けにいくつかの事故も報じられた。

4月22日、東京メトロポリタンテレビが資料映像を撮影するために同社敷地内の駐車場で飛ばしたドローンが強風にあおられて行方不明となり、翌日、近くの在日英国大使館の敷地内で見つかった。5月6日、ドローンが宇都宮市の民家の玄関先に落ちているのが家人に発見されたが、近くの男性が操作していてコントロール不能になったためらしい。5月21日、「(東京・浅草の)三社祭でドローンを飛ばす」とインターネットで発信していた横浜の少年(15)が警視庁に威力業務妨害罪で逮捕された(少年は以前にも長野市の善光寺でドローンを落下させるなどして厳重指導されていた)。

7月にはアメリカでドローンに搭載した半自動式拳銃を遠隔操作で発砲している動画がユーチューブにアップされた<1>。CNNニュースによると、動画を撮影したのは大学生で、父親所有の森の中で撮影したものだという。私有地内なので現行法には触れないというが、ドローンから銃発射という穏やかでない事態に米連邦航空局(FAA)が事情を聴いている。

家電量販店でも1機数千円から十数万円

【ドローン(Drone)】複数のプロペラで飛行する小型の無人機で、一種のロボットである。UAV(Unmanned Aerial Vehicle)とも呼ばれる。GPS機能をもち、遠隔操作できる。偵察、空爆などの軍事用途で開発されたが、またたく間に民間に転用され、荷物の宅配や人が立ち入れない場所の点検作業などに利用する計画がある。小型カメラを搭載すれば空中撮影が楽しめるため、趣味としての個人利用も進んでいる。すでに家電量販店に並ぶほどの人気商品で、価格は数千円から十数万円までさまざまである。

ドローンが便利なロボットであることは間違いない。事件直後にネパール中部で発生した大地震で、一市民が翌日にドローンを飛ばしてカトマンズ上空を撮影した動画がウエブのハフィントンポストに掲載されているが<2>、甚大な被害が克明に記録されており、その性能は驚くばかりである。この映像が人命救助の手助けになることも十分考えられよう。世界遺産への登録勧告で話題になった長崎県の軍艦島(端島)をドローンで撮影したソニーのプロモーションビデオでは<3>、ドローンが建物の狭い隙間や天井の下をたくみにかいくぐって飛んでいる。

この技術は今後、過疎の離島に医療品を運ぶ手段などさまざまに利用されるようになるだろう。お掃除ロボット、ルンバのように、私たちの身近な存在になるのも遠くないかもしれない。