建設計画大迷走! 悪いのは誰だ?

誰も責任をとらず、よくワケのわからないまま、新国立競技場の建設計画は「白紙撤回」となった。工期や経費は大丈夫なのか。もはやシステムの問題なのだから、このままでは再び、失敗するのではないだろうか。

プロジェクト・マネジメントの観点でみると、一連のゴタゴタはケースタディとして示唆に富んでいる。総工費高騰で世論の反発を受けたこともあり、安倍首相は2520億円見込みの建設計画を「ゼロベース」で見直すことにした。賢明な判断だったのだろうが、蚊帳の外に置かれた東京都の舛添要一知事は「朝令暮改」とこれを批判した。

この類のプロジェクトが成功する条件はまず、「期限内」「予算金額内」で活動を終えることにある。事の発端は2012年11月、建築家の安藤忠雄氏を委員長とするデザイン審査委員会でザハ・ハディド氏のデザインが決まったからである。コンペ条件は1300億円だった。安藤氏の会見に出席して驚いた。柔らかい関西弁で笑いを誘い、「頼まれたのは(デザインの)選出まで。2520億円は私が決めたわけではない」と釈明した。

そりゃ人件費や建材費など建設費の上昇があったのは分かる。でも、基本設計、実施設計で何度も実現可能性を吟味していたのにも関わらず、総工費の高騰化を見抜けなかった。プロジェクト・マネジメントの基本は、計画(Plan)、実行(Do)、チェック(Check)、是正(Act)という管理サイクルが常に回っていることである。

管轄の文部科学省、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)のマネジメントが甘かったことになる。いわゆるリスク管理。後工程ほど変更・修正の困難度が増すのだから、早め早めに軌道修正する必要があった。もうニッチモサッチモいかない状況での「白紙撤回」は2019年ラグビーワールドカップ(W杯)の使用を不可能にした。