裏切られた年間3000人の合格者目標

「年間3000人の司法試験の合格者を目標にする」──。こんな鳴り物入りで始まった司法制度改革。その柱の1つとして、法曹になる学識や能力を身に付けるための専門職大学院「法科大学院(ロースクール)」が次々と新設された。しかし、2014年9月に発表された司法試験の合格発表を見ると、ロースクールを修了した人の合格者は1647人。その合格率は21.2%にしかすぎなかった。このため「あの掛け声はいったい何だったのか」という恨み節が、ロースクール関係者や修了者の間から漏れ伝わってくる。

その一方で、ロースクール間の格差が拡大の一途をたどっている。合格者が最も多かったのが早稲田大学の172人で、それに中央大学164人、東京大学158人、慶應義塾大学150人、京都大学130人と続く。逆に合格者が1ケタ台のロースクールは39校で、合計74校のうち52.7%も占める結果となった。愛知学院大学、神奈川大学、島根大学、姫路獨協大学にいたっては、合格者がゼロという不名誉な成績を残している。

なにはともあれ、ロースクール修了まで法学部既習者で2年、法学部未修者で3年という時間を要し、その間の学費が数百万という負担をかけながら、肝心要の司法試験に受からないというのではリスクが大きすぎる。「人生を棒に振りたくない」と考えるのは人情で、ロースクールの志願者は激減する一方だ。ピーク時の04年に7万2800人だったものが、14年には1万1450人と、84.3%ものダウンになっている。

こうなってしまった原因として指摘されているのが、「司法試験を管轄する法務省と、法曹教育を担う文部科学省とのボタンの掛け違い」(法曹関係者)だ。法務省は少数精鋭のロースクールの新設を念頭に置いていたのだが、ロースクールを併設しないと法学部の存在意義がなくなると危機感を募らせた各大学の要望を受け入れて文科省が認可を次々と与え、その結果として74校という“過剰状態”を招いてしまったわけだ。

しかし、志願者の激減は入学者の減少に直結し、14年のロースクール全体の入学定員の充足率は59.6%にとどまる。特に司法試験の合格率が全国平均の半分未満の25校に関しては、461人の入学定員に対して実際の入学者が127人に過ぎず、その充足率は27.5%という悲惨な状況になっている。これでは学校経営にも支障を及ぼす。そのため募集を停止するロースクールが相次ぎ、最近でも静岡大学、愛知学院大学が16年度からの募集停止を明らかにし、稼働しているロースクールは51校に減ることになる。