LGBTとは、L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)をはじめとする性的少数者(セクシャル・マイノリティ)の総称のひとつである。
LGBTの人口は、血液型がAB型の人や左利きの人の割合とほぼ同率だ(13人に1人)。同じ会社に籍を置く人も少なくないだろう。
アップルのCEOティム・クックもゲイであることをカミングアウトするなど、欧米では彼らの存在感は社会の中で揺るぎないものになっている。
日本国内でも最近、一部の先進的な企業が、彼らLGBTのポテンシャルをフルに活用しよう、といった考えのもと、社内でセクシャル・マイノリティに関する教育や施策を積極的を展開している。その最新事情を、ゲイであることを4年前にカミングアウトした現役電通マンが語る。

人口の7.6%(13人に1人)がLGBTです

こんにちは。認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表の松中権です。

LGBTをはじめとするセクシュアル・マイノリティの人たちと、そうでない方々をつなぎ、全ての人が自分らしく歳を重ねられる社会づくりを目指し活動をしています。

僕自身はLGBTでいうとG。男性として男性が恋愛対象のゲイです。新卒で入社した広告代理店の電通では15年目の中堅どころ。4年前に会社でカミングアウトし、サラリーマンを続けながら二足のわらじでNPOを主宰しています。

筆者の松中権氏

おかげさまで、最近では様々な企業に訪問して「はじめてのLGBT」と題して、LGBTに関する基本的な情報や当事者が抱えている悩み、社会の仕組みや制度とのギャップについて講演をさせていただく機会も増えてきました。

そんな中、よく質問されるのが、

「LGBTの人たちが差別や偏見に悩み苦しんでいることはわかりました。では、企業としてLGBTに関する社内教育に取り組む、より具体的なメリットは何なんでしょうか」

というもの。

自社の倫理規定として差別禁止条項の中にLGBTを含めたり、社内で勉強会を開いたり、「人権視点」としてできることから始める企業が少しずつ増え始めていますが、さらに積極的にアクションを起こすには、社内のリソースを活用する以上、その利点を「経営視点」で語る必要がある、というのが実情のようです。

▼企業がLGBT施策に取り組むリターンとは?

僕が講演をする際は、世界共通のLGBTのシンボルでもある6色レインボーになぞらえて、6つのポイントにてお話しするようにしています。ちなみに、7色レインボーでなく6色レインボーである理由は諸説ありますが、奇数:odd(奇妙な)numberでなく、偶数:even(平等の)numberにしよう、というのが有力説のひとつなんですよ。

【LGBT施策のメリット1】Recruiting

ひとつ目は「人材採用」。LGBTの当事者、特に若い世代を中心にカミングアウトする人たちも少しずつ増え始め、「自分らしく働けるか」が企業選択のより大きな理由となってきました。LGBTに対してネガティブな古臭い企業風土を引きずっていると、知らない間に優秀な人材を逃してしまっている可能性があるわけです。また、トランスジェンダーの人たちは、差別や偏見を恐れて就職自体を諦めてしまっている場合も多くあります。

ゴールドマン・サックスでは、LGBTの学生向けに「キャリア・メンタリング・セッション」と称した模擬面接ワークショップを開催するなど、企業のLGBTに対するポリシーを直接伝える工夫をはじめています。

将来的には、LGBTに限定した対応の必要もなくなるような社会が望まれますが、過渡期である現在においては、プライバシーも考慮し個別アプローチが有用だと思われます。