「会社はいい会社と悪い会社しかない」

柳井さんが一般的な小説を読んでいるところを見たことがありません。経営、商売に関連したノンフィクションばかり読んでいました。読書家だった彼のそうした姿からも、いかに現実主義・現場主義の経営者だったかがわかります。

ユニクロでの7年間に、商売の原理原則を徹底的に教えられました。ことあるごとに言われていたのが、「会社というのは、いい会社と悪い会社しかない」ということで、いい会社の証としての原理原則25カ条を叩き込まれました。今は、相当数に増えていると聞いていますが……。

ローソン 玉塚元一社長

いい会社になるための原理原則を考えながら、決してぶれることなく、純粋に粘り強く実行し続けていく。いい会社であるためにはまず強い会社にならなくてはなりません。いつ潰れるかわからないような会社では、社員の一致団結など望むべくもありません。

商売・経営は結局、お客様のためにあり、それを実践できてこそ、本当に強い会社になります。しかし、社長や経営者だけがいくら頑張っても、何もうまくいきません。やはり目標を共有し、みんなが納得できる形の中で、全社員で一緒になって経営してこそ、いい会社になるということを学びました。

会社が発展し業績を伸ばし続けるには、正しいことを正しく実行し、数字を含めたあらゆる情報を俯瞰して判断し、常に最良の最適解を選択しなければなりません。安定した大企業に就職すれば安心できるかというと、もはやそんな時代でもありません。変化に絶えず対応していくアメーバ力のようなものがなければ、会社なんて簡単に潰れてしまいます。

多くの人は、大会社が倒産するなんて、めったなことではありえないと思っています。しかし、経営者がミスをおかしたり、経営判断を見誤れば、基本的に会社は倒産してしまいます。だから、決して慢心したり緊張感を緩めてはいけないし、現状に満足してはならないのです。やはり、現状を否定し続けて、より良い状況を創出するために創意工夫を怠ってはならないのです。

では、何をすればいいのでしょうか。それを説明できるような理論やセオリーなどありません。すべては現場を見て、具体的な対策を個別にあるいは総合的に実行しなくてはなりません。経営に効く妙薬などないのです。名医は触診から始まって、あらゆる方法で病気を見つけだし、病巣をえぐり出して、健全な身体に戻します。「できることは何でもする」。それが基本です。