なぜあの上司に人はついていくのか──。彼らが無意識にでも実践しているリーダーシップ哲学がある。もはや「オレについてこい!」だけで部下は動かない。今、注目を集める理論を、ダイエー、良品計画で行われた経営再建の実例で解説しよう。

ダイエー
▼生鮮品の鮮度が悪い! どう解決するか

トップダウン経営で成長を遂げたが、拡大路線が行き詰まり、経営の混乱と業績不振が続くスーパーマーケット、ダイエーの経営再建を任された。

スーパーでは生鮮品の商品力が重要である。ところが、ある店舗で陳列する野菜を競合店の商品と比較すると、自社店舗の野菜は鮮度がよくなかった。

担当者に問いかけたところ「それは偶然、悪い店舗で買われたものだと思います」という言葉が返ってきた。しかし実際には、店頭に並ぶ野菜の鮮度問題は以前から指摘されていた。それにもかかわらず問題は放置され、抜本的な対策が講じられてこなかったのだ。

その背景には業績不振が続いているのに危機意識が共有されていない、他者に責任を転嫁する意識の蔓延、一部の実力者に偏った発言権など、不健全な企業文化があると思われた。

経営再建にあたり約50店の不採算店を閉鎖することが決まった。今回の店舗閉鎖で一段と従業員の士気が下がることが予想された。あなたなら、この局面をどう乗り切るか。

○「支配型リーダー」ならこう行動する

野菜の鮮度の悪さが放置され続けていたのだとすれば、担当者の罪は非常に重いと支配型リーダーは考える。まず、その責任を追及しなければならないし、今後も問題が放置されることを防ぐには、従業員への見せしめとして罰を与えなければならないと思った。

結論だけを命令する「支配型リーダー」

担当者に「野菜の鮮度を改善せよ」と厳命し、実行させる。部下を畏怖させて、動かしていかなければならないと考え、ノルマも課した。具体的な鮮度の改善方法は部下に丸投げした。約50店舗の不採算店閉鎖は、経営再建するうえで必要な痛みであり、従業員の士気が低下したとしても仕方がない。業績が改善できればよいと考えた。

解決の方向を示されないまま問題解決を押し付けられた現場では、責任のなすり合いが起き、結果、解決はできなかった。