金融機関が熱い視線を送る税制

4月に創設された子どもや孫の結婚や出産、子育ての費用に充てる祖父母や親からの贈与を非課税扱いとする制度に、金融機関が熱い視線を送っている。

なかでも顧客に富裕層が多い信託銀行大手はチャンス到来とばかりに、制度がスタートした4月1日に一斉に新商品の取り扱いを始めた。2013年4月に投入し大ヒットした教育資金贈与への非課税制度に対応した信託商品でうまみを知っただけに、手ぐすねを引いて「二匹目のドジョウ」でのヒットを狙う。

結婚・子育て資金贈与非課税制度は、2015年度税制改正で創設された。20歳を超え50歳未満の子どもや孫の結婚や出産、子育ての資金への贈与が1000万円を限度に非課税となる。制度創設の狙いは、1300兆円にも膨れあがった個人金融資産の6割超を占めるとされる高齢者の資金を若年層に還流させ、個人消費、景気の向上につなげることにある。

デフレ経済からの脱却を最優先課題に据える安倍晋三政権にとっては、企業への再三の賃上げ圧力と合わせて、「経済の好循環」実現に向けた税制面での重要施策に位置づけた。

同様な税制としては、13年度に導入された30歳未満の孫らに1人当たり1500万円までなら何人でも非課税で贈与できる教育資金贈与非課税制度ある。教育資金に活用できる対象範囲は厳格に規定されたのに対し、結婚・子育て資金の使途は挙式や新居への引っ越しにかかった費用、さらには不妊治療に至るまでと緩く、使い勝手が良い非課税贈与制度となっている。

この2つの非課税制度は合わせて利用でき、子どもや孫1人につき2500万円を限度に非課税扱いとなり、富裕層にとっては相続税対策も含め、この上ない魅力的な制度となっている。