おいしい低糖質メニューの開発

清水忠明・「銀座ラ・トゥール」総料理長。

一度なってしまうと、一生付き合わなくてはならなくなる病気。それが糖尿病だ。2007年の厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、糖尿病が強く疑われる人が890万人、それに糖尿病の可能性を否定できない人が1320万人で、合計2210万人の人が糖尿病か、糖尿病予備軍と推定されている。つまり、国民の6人に1人は糖尿病(予備軍)ということになる。そして、腎臓障害などの重篤な合併症を引き起こし、年間で1万4000人前後の人が亡くなっているとても怖い病気なのだ。

そうした糖尿病患者の日常生活で最も悩ましいのが、血液のなかの血糖値が上がらないようにするために、糖質を制限した食事を強いられること。お米、パン、麺類などの炭水化物や、糖分の摂取が制限される。しかし、それではどうしても味気ないし、活力が生まれてこないということで、いろいろな糖質制限食品が作られてきた。

「どれを食べてもぼそぼそで、まったくおいしくないのです。これでは生きている喜びを感じられないと思いました」と語るのは、2006年に銀座交詢ビルで開いたレストラン「銀座ラ・トゥール」で5年連続してミシュランの1つ星を獲得したことのある清水忠明シェフだ。

実は、清水シェフ自身も糖尿病を患わっている。24歳で渡仏して3つ星レストランの最高峰といわれる「トゥールダルジャン」に入り、副料理長として腕を振るった後に帰国。1993年に神楽坂に「ラ・トゥーエル」を出店するなど、長年に渡って調理場に立ち続けたことも影響しているのかもしれない。「1日に摂取する糖質は120グラム以内というのですが、外食すれば主食のほとんどが炭水化物で、甘いものを食べようとするとお砂糖がたくさん入ったものばかり。とても安心して食事ができません。であれば、料理の腕を活かしておいしく食べられる低糖質のメニューをつくろうと考えたのです」と清水シェフはいう。