孫正義氏がこれまでに経験したタフな場面をケーススタディの形で完全再現。
あなたは正しい判断を下せるだろうか。

Q. 価格引き下げ競争を仕掛けるべきか

2006年10月、ソフトバンクモバイルは、業界初の同一ブランド携帯間の音声通話定額プランを開始。07年からもプランを続々発表した。そこで選択。A案は、価格競争を最終手段として、ほかに代替案がないときに使う。B案は、最初から積極的に価格競争を打ち出す。
【A】他に方法がないとき仕掛ける【B】先手必勝で仕掛ける
(正答率30%)

一等賞になるために。勝つために。

掲げた目的のために激しい価格競争を仕掛けるべきかどうか。シェア確保のための先手必勝か、利益確保を優先させて他社と似た価格設定にするのか。

ヤフーBBの顧客獲得のために行われた、ADSLのキャンペーン。(写真=時事通信フォト)

2001年から始めたブロードバンド事業「ヤフーBB」展開の際、私たちは新規参入する者として攻めました。

巨大なライバルに価格競争を仕掛け、シェアを取りにいこうとしたのです。街頭でADSLモデムを無料配布したり、当時ADSL事業の多くが1.5Mbps接続で月額4000~6000円だったところを、8Mbps接続で月額3000円と低価格にしたりしました。その結果、競合他社も料金体系を変更せざるをえませんでした。

携帯電話事業では、僕は価格だけで勝負するつもりはありませんでした。ヤフーなどグループ会社の力を駆使し、コンテンツとサービスを充実させて「安いから」ではなく「使いたい」キャリアに育てたいと考えていた。

とはいえ、よりリーズナブルな「価格」設定にすることは他社との差別化をはかれる魅力的な要素でした。

ソフトバンクモバイルが主に実施したのは、07年1月から「ホワイトプラン」(月額基本使用料980円でソフトバンクユーザーへの通話が1~21時まで無料)、同6月から「ホワイト家族24」(家族がソフトバンクユーザーなら通話が24時間無料)、08年2月からは期間限定で「ホワイト学割」(学生とその家族が申し込み期間中に新規契約すれば、月額基本使用料が半額もしくは無料に)。月額利用料などがかからず、他キャリアと比べて面倒な決まりごとがないのも特徴です。

とりわけ、「980円プラン」は当時、世界で一番安く、また「家族間通話を無料」は世界初の快挙でした。