定年後の自由時間は、睡眠や食事の時間を除けば1日13時間もあるという。60歳から80歳までの20年間の合計で約10万時間。これは、40年間の労働時間に匹敵するそうだ。今後使える時間がこれだけ長いのだから、50代はまだ人生の中間地点。これからは、やりたいことを実現するために、お金や住まいを利用したいものだ。

50代、60代の人に、今後の住まいについて数多くインタビューした経験があるが、夫と死別し、子どもを育て上げた50代の女性から、「将来を考えると、介護付き施設などを検討したほうがいいですか」と聞かれたことがある。まだ再婚も可能だと思える、魅力的な女性だった。

「元気なうちは、人生を楽しむための住まい選びをしたほうがいいと思います」と私は答えた。老後になって困らないように、資産管理をする必要はあるが、50代から終の棲家を考えるのは早急だろう。住まいは生活の拠点であるだけに、快適な生活空間を確保するために選んでほしいと思う。

また、この年代の夫婦を見ていると、妻のほうが精神的に自立している傾向があるように感じる。なかには残念なことに、定年後の膨大な時間を夫と二人きりで過ごすことに嫌気がさして、離婚を考える女性もいるだろう。死別にせよ、離別にせよ、シングルアゲインの女性たちには、どんな住まいが適しているのだろうか。

まず、今の住まいを振り返ってほしい。恐らく今の住まいは、利便性よりも住環境を重視した場所にある、子どもを含む家族のための器だろう。思い出が詰まっているとはいえ、これからは家族のための器は不要。新しい住まいは、第一に、一人暮らしに適した利便性の高い立地を選ぶこと。第二に、コンパクトな住まいを選ぶことだ。

立地選びの際に重要なことは、「今後は誰と一緒にどう過ごしたいのか」。友人と過ごしたいなら、ネットワークを維持できる範囲で、駅近など利便性の高い立地を選びたい。子どもと過ごしたいなら、互いに行き来しやすい交通至便な立地を選びたい。自分の親の近くに住むという選択肢もあるだろう。 また、「子どもがいたときの生活を持ち込まない」のも原則だ。一人暮らしに適した広さがあれば十分。普段使わないものは捨て、泊まるかもしれない子どものための部屋なども不要。便利な場所なら駅前にホテルもあるだろうし、家が近ければ泊まるほどのこともないだろう。女一人が快適に暮らすためには、割り切りも必要なのだ。