リクルートが2012年10月にリクルートホールディングスへとガバナンス体制を変更した際、複数の主要事業部門を分社化した。この分社化で誕生したのが、グループ全体のIT関連業務を手がける専門機能会社のリクルートテクノロジーズだ。さらに同社では2013年に、各事業会社のIT戦略を担当する部門を横割りの「事業別組織」から縦割りの「機能別組織」へと大規模な組織変革を実施。専門機能会社として、より大きな成長を遂げている。

専門機能会社としての存在意義を問い直す

大規模改革を進める上で中心人物となったのが、リクルートテクノロジーズ 執行役員 ITマネジメント統括部 統括部長 兼 リクルートホールディングス IT戦略室 室長を務める山村大氏だ。同氏は2005年にリクルートへ中途入社し、リクルートテクノロジーズの前身であるシステム管理部門にエンジニアとして在籍。その後、分社化前後のリクルートキャリアでIT関連部署の部長職を経験した後、2013年にリクルートテクノロジーズへと出向した。

「弊社はグループ全体に関わるITとマーケティングの専門機能会社として、極めて高水準なスキルや実力が求められています。ITに特化したプロフェッショナル集団である以上、それぞれの専門分野において秀でた実力を兼ね備えていなければなりません。また、リクルートホールディングス全体で“世界ナンバーワンを目指す”としているフェーズにおいて、それをITの側面から支える我々もグローバルでも通用するレベルまで引き上げる必要があると感じていました。しかし当時は、特に自分が担当することになった各事業のIT戦略を立案し実行する部隊に、専門集団としてそこまで差別化されたスキルや機能進化があるようには見えなかったんです」と、現職就任時の課題感を語る山村氏。

これは、「ゼクシィ」「カーセンサー」など各事業会社が提供するサービス単位でIT組織を編成するというリクルートテクノロジーズ内の従来体制に原因があった。一口にIT分野といっても、IT戦略立案やシステム開発・運用、Webマーケティングなど非常に幅が広く、近年ではスマートデバイスの登場をはじめ多様性がより一層求められている。そうした中、IT組織が分散していれば当然ながら同一機能内の知識やノウハウが集約できず、機能ごとのブラッシュアップも難しい。また事業部別の組織では、統率するマネジメント層の得意領域や思考が、そのまま各グループのケーパビリティの限界になってしまう、という課題感もあったという。

「このままでは、リクルートテクノロジーズという専門機能会社自体の存在意義がなくなってしまうのではないかと感じ、事業別組織から機能別組織への改革に踏み切りました」と語る山村氏は、通常業務をこなしながらも引き継ぎ期間のわずか1カ月という短期間で組織改革の大枠を作り上げ、各事業会社との調整に入っていった。

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