ゆるキャラは、狭く、暑く、暗く、臭い

相変わらず、大人気のゆるキャラ。あの中がどうなっているか、ご存じだろうか。

筆者もたびたびゆるキャラに入る。写真は東京・上野のアメ横の高架下商店街「ウェルカムモール」のウェルモパンダ。無邪気に抱きついてくる子供と接することで「人の役に立つ」とは何かを深く考えるようになったという。

その構造によっても異なるが、ほとんどのゆるキャラの中は、狭くて暑い。冬でも30分も動けば、滝の汗が流れるほどだ。だから、自分の頭を内部につっこんだ瞬間、「うっ」となる。汗の臭いが鼻腔から飛び込んでくる。過去、キャラに入った数十人の体臭と汗が混然一体となってキャラに染みついている。剣道の面をかぶったときとほぼ同じ臭いがする。

そして、暗い。キャラの目や口などの隙間からわずかな光は漏れてくる。感覚としては押入れにはいったような暗さだ。暗所・閉所恐怖症の人はおそらく中に入ることはできないだろう。

さらに、歩きづらい。目の位置や様式、大きさにもよるが、視界が極めて限定されている。1m先が見えても、足元が見えない。また、その逆もある。だから、ちょこちょこ歩きしかできない。四方八方から人に触られ、引っ張られるとバランスを崩し、転びそうになるのを必死で耐えることになる。

「外見」の可愛さからはうかがい知れない、苛酷な「労働環境」なのだ。

▼究極のサービス精神を発揮する

私は、わけあって若い頃から警察や水道局、商店街などのPR用のゆるキャラに数えきれないほど入ったきた。というか、今でも入っている。

オファーが多いのは身長が150センチという、ゆるキャラに入るに極めて理想的な高さであることが大きいが、私自身がキャラに入ることを面白がっているため、客の反応もよく、依頼主に大変好評だということもある。

身長が低いから様々なキャラに入ることができ、それぞれに身振り手振りを自分で演出。

老若男女、誰からも「可愛い~!」と黄色い声がかかる。そして、自分に向けられるすべての人の顔は楽しそうに笑っている。もう、これだけでもうれしくて、気持ちが盛り上がってくる。自分の一挙一動が注目され、ちょっとしたアクションにも歓声があがるのだ。

人々が笑顔満面だとこちらも自然と顔がほころぶのだ。暗くて狭い中で、私は笑っている。思わず、声をかけたくなってしまう。だが、ふなっしーのように声を出してはいけないルールなので、我慢。そうしているうちに心身ともにキャラと同一化し、そのキャラにふさわしい立ち居振る舞いがどんどんできるようになってくる。自分がキャラに憑依する感覚だ。

素の顔をさらしている日常生活では絶対できないような、可愛いポーズやオーバーアクションも平気でできるようになり、それが快感になる。