「プロジェクト」だと言い聞かせるといい

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日本男性の「家事・育児」への参加は不十分

まず押さえておきたいことは、日本には「イクメン」がほとんどいない、という事実です。育児を積極的に行うイクメンという言葉は、政府の積極的な広報もあって、誰もが知るようになりました。しかしその内実はお寒いのが現状です。男女共同参画白書のまとめによると、6歳未満児のいる夫の家事・育児関連時間は、日本では1日当たり1時間。欧米の先進国では多くが3時間超です。日本男性は家事や育児をほぼしていない、といってもいいでしょう。

原因のひとつは、男性の育児休業や時短勤務をめぐる体制の不備です。たとえ制度があっても、休業の負荷を企業全体で分けあう体制がなく、その人の職場にそのしわ寄せがきてしまう。だから仕事を押しつけられた同僚は「イクメンはいいよな」という恨み言をこぼすことになります。

日本の企業は長時間共にいることで培われるチームワークを重視するため、会社以外の都合を持ち出されることを嫌います。たとえ非効率でも「みんなが顔を揃える会議」や「四半期ごとの飲みニケーション」が重視され、そこでは「家庭の事情」は邪魔でしかありません。

一方で、日本には「子どもは母親がみるもの」という規範が強くあります。高度経済成長期に進んだ都市化では、誰かが子どもの面倒をみてくれる大家族での生活から、夫婦2人だけで育児をする核家族への移行が起こりました。このとき欧米では一般的なベビーシッターの活用はあまり拡がらず、専業主婦による育児が規範化していきました。

しかし現在、都市部を中心に専業主婦家庭が急減しつつあります。共働き家庭の増加は、経済的な理由に加えて、社会的な要請でもあります。少子高齢化が進むなかで、日本という国も女性の労働力を必要としているからです。このまま女性だけが家事・育児を担い続けるというモデルは現実的ではありません。保育所を代表とする育児サービスの拡充だけでなく、男性の育児休業や時短勤務が容易に取得できるような仕組みづくりを整える必要があります。