よく失敗しがちな中堅・中小企業による大手企業OBの雇用。しかし、アイリスオーヤマでは綿密なサポートや、独自のコミュニケーション体制で「異文化」の壁を乗り越えている。

新天地に行き着いたIHのエキスパート


(左)常務取締役研究開発本部長 大山繁生氏 (右)家電開発部大阪R&Dセンター 犬飼正浩氏

「あなた、顔つきが以前とは変わって、なんだか明るくなったわね」――。

中国・大連の工場から戻った犬飼正浩は、玄関先で出迎えてくれた妻の一言で、アイリスオーヤマに勤め始めてからの3カ月余りの日々が、いかに充実したものだったかを再認識した。

2月に51歳になる犬飼が社会人としての第一歩を踏み出したのは、日本を代表する家電メーカーであった三洋電機。入社して3年ほど電子レンジの設計に携わったが、その後はIH(電磁誘導加熱)調理器の設計を行ってきた。「一般家庭向けのクッキングヒーターから、外食チェーン店の厨房で使うものまで、あらゆるIH調理器に関わってきました」と犬飼はいう。

そんな犬飼に転機が訪れたのが2007年のこと。勤務先だった滋賀の工場がリストラの一環で群馬の工場へ集約されたのだ。1年間ほど単身赴任で働いていたものの、父親が奈良で営んでいた山林業の整理の問題もあり、同社を退職する。それから2年ほどたち、家業の整理にメドがついたことで、大阪市内にある中堅の医療機器メーカーのエンジニアとして働き始めた。しかし、13年1月に辞めることになる。

当然、日々の生活のために新たな職を探さなければならない。そんなときに妻から、アイリスオーヤマが大阪に家電関係のR&D(研究開発)センターを新設するため、中途採用の社員を募集しているという話を聞き、応募を決意する。結果、一次、二次面接ととんとん拍子に進み、4月1日付での入社が決まった。