突き放して、再び購買意欲を呼び戻す

土壇場になって契約を渋る客に対して、ワルい業者は様々な手を使う。

例えば、一端、相手を「突き放す」という手法だ。客の心に揺さぶりをかけ、再び、意識をこちらに向けさせて契約締結を迫るのだ。

私がある会員制クラブへの勧誘を受けた時のことだ。

高額の入会金を払えば、リゾートホテルが安く借りられるなどの説明を受けた。勧誘員は最初、優しく話していたが、肝心の入会契約を私がノラリクラリかわし始めると、突然、口調が厳しくなった。

「あなたには将来の目標があるのですか?」

そんなこと他人のあなたに言われる筋合いはない。内心そう思った私だが、真に受けず、こうかわした。

「特にないですね。今を楽しく生きればいいかな?」

するとどうだろう。相手の目がたちまち吊り上がり、声を荒げるのではないか。

「主義主張もないのでは、幸せな人生は送れません!」

まさかそんな激しい口調で言われるとは。動揺した私は「社長になるという夢は持っているかな?」とその場を取り繕ったが、相手はさらに突っ込んでくる。

「何の社長になるつもりですか!」

咄嗟に答えらず、黙り込む私へ、勧誘員は「そんな漠然としたことで、本当に夢が実現できると思っているのですか!」と畳み掛けてくる。次第に精神的に追い詰められ、相手の質問に真摯に答えなければならない空気になったのだった――。

ビジネスにおける交渉ごとにおいても、こちら側が真剣に話を持ち掛けているのに、相手が曖昧な答えばかりで、話の土俵に乗ってこない時がある。そんな時には一端、相手を突き放してみるといいかもしれない。もちろん、単に相手の心を逆なでするような言葉を発すればよいわけではないが、状況が一変することがあるのだ。