2007年、フラット型組織へ転換したトヨタ。すると、強みである集団の力が弱体化した。そこで生み出されたのが「組織の小集団化」だ。

※プレジデント誌の特集「トヨタvsグーグル」(2013年9月16日号)からの転載記事です。

07年、トヨタはポストフラット化の人事・組織改革を断行した。1989年に意思決定に時間がかかる“大企業病”の払拭を目指し、係長、副課長、課長、次長、副部長、部長の階層を半減し、これまでのピラミッド型組織を解体。1人のグループ長(課長職)が20~30人の部下を率いるフラット型組織へ転換した。だが、しだいに「上司と部下の関係がぎくしゃくする」(宮崎直樹元専務(現豊田合成副社長))副作用も表面化した。

「上司と部下がお互いにしっかりと向き合い、ざっくばらんに話し合って高めていくコミュニケーションこそ命というのが当社のよさでもあります。それが物理的に難しくなったのです。生産量がどんどん拡大し、マネージャーの仕事量が増えて忙しくなると、どうしても部下の面倒を見るのが難しくなる。我々が大事にしている人材育成も疎かになったのです」(宮崎元専務)

フラット型組織の導入によってグループ長のマネジメントが困難になっただけでなく、個々人がバラバラになるなどトヨタの強みである集団の力が弱体化した。そこで上司と部下の良好な関係を取り戻し、人材を育成する仕組みとして生み出されたのが「組織の小集団化」だ。

グループ長の下に3、4人の社員の面倒を見るチームリーダー(係長職)を置き、教え、教えられる関係を再構築することにした。ただしチームリーダーは正式な職位ではなく、グループ長の裁量で命じられる任意の立場だ。

「いずれグループ長になる人たちです。教えることによって自分も学ぶところがあります。その前に一緒に仕事をしながら後輩の面倒を見ることでグループ長候補を育てるという効果もあります」(宮崎元専務)