外食産業がブラック企業になる理由

外食産業などサービス業の人手不足が深刻化している。外食大手チェーンでは営業時間の短縮や店舗休業に追い込まれたり、店舗を閉鎖する企業も出てきている。

人手不足の理由としてよく言われるのが、少子高齢化による生産年齢人口の減少だ。つまり労働人口の減少による労働力不足が不況下でも潜在的に進行していて、景気回復によってそれが一気に顕在化した、と。

確かに長期的に見れば、労働人口の減少による労働力不足は日本の大きな課題だ。しかし今日の人不足の言い訳としては風呂敷を広げすぎだろう。サービス業の人手不足の理由は簡単で、要は労働コストが市場の受け入れ価格と見合っていないのだ。

人が来ないなら人が来るような値段にすればいいだけのことで、従来の伝統的な値段にしているから人が取れないのだ。労働コストを安く抑えておいて、「夜は一人で切り盛りしろ」などと無理なオペレーションを強いるから、ブラック(企業)問題になるのである。

人が取れるか取れないかはあくまで需要と供給の関係であり、サービス業は需要と供給の関係をもっとも測りやすい産業である。供給側が一方的に設定した賃金で人が集まらなくなったのだから、人が集まる賃金に変えるしかない。

マーケットメカニズムの中で生き残るということは、提供する商品の価値と値段のバランスが取れているということである。賃金を上げて潰れるような産業や会社なら、もともと需要と供給のバランスが取れていないのだから長続きするものではない。

極端なことを言えば、バランスの取れた企業だけを残したら、外食やファストフードの店舗数は半分になるだろう。それでも餓死する人は出ない。なぜなら世の中にはコンビニ弁当など、工場で作っている食料品が溢れているからだ。はるかに人手がかからない工場生産の食料品が出回るようになれば、座って食べさせる労働集約型の外食産業が淘汰されるのは当たり前だ。

外食産業が人手不足を解消するには2つの方向しかない。一つは人が集まる給料を払うこと。その労働コストを賄えるだけの値段設定でも客が来るなら問題ない。価格は顧客にとっての価値で決まる、というのが商売の大前提だ。

早い話、時給2000円の給料を払ってもやっていけるだけの商品なりサービスなりを提供しているのかということである。提供していないならコンビニにやられるのは当然。競争相手は似たような外食産業ではないのだ。

もう一つの方向はコンビニ弁当のように工場化して、生産性をひたすら高める。行きつくのは海外である。コンビニのレジ周りで扱っているホットスナックのように、あとはレンジでチンすればいい状態まで低コストの海外で作る。あるいは、コンビニのレジ周りで好評の100円コーヒーのように徹底したセルフ化で、価格と満足度をマッチングさせる手もある。

従来の業態を変えずに従来通りに人手をかけて、しかも低賃金で過酷な労働を強いていて、「人が集まらない」と嘆くのは筋が違う。自由主義経済の原則は適者生存。人が来ないということは、“適者”ではないのだ。