以前も「引き下げ」で介護サービスの質低下

年明け早々、政府は介護報酬を2.27%引き下げる方針を発表しました。それによってどんな影響が出るのか。父の介護でお世話になったケアマネージャーに話を聞くと、驚くべき事実が判明しました。その中身を話す前に、この介護報酬に関する事実確認を簡単にしましょう。

介護報酬とは介護サービス事業者が提供したサービスに応じて受け取るお金。利用者の自己負担(基本的に1割)を除いた9割が、市町村が運営する介護保険で賄われています。保険の財源は40歳以上の人が支払う介護保険料と税金(国税と地方税で半々)です。

社会の高齢化に伴い要介護者は増える一方。当然、公費で賄われる介護費用は膨張していきます。今回の引き下げはそれを押し止めるのが狙いといわれています。

現状では介護報酬を1%引き下げれば、介護にかかる税金や保険料を年間で約1000億円減らすことができるといいます。2.27%の引き下げで、2300億円近い公費を切り詰めることができるというわけです。

報道によると、引き下げを主張したのは財務省。介護サービス事業者の利益率は一般的な中小企業よりも高いことから当初4%は下げられると主張していました。が、厚労省は、大幅な引き下げはサービスの質の低下を招きかねないと抵抗。こうした綱引きの結果、2.27%で決着したとのことです。

介護報酬の引き下げは財政の負担だけでなく、サービス利用者の負担も軽くなります。たとえば1回1万円のサービスは227円安くなって9773円になる。利用者の負担は1割ですから、そのサービスを受けるのにこれまで1000円払っていたのが977円で済むことになる。要介護度の高い人は複数のサービスを受けていますから、チリも積もれば山となるで、かなりの節約になります。しかし、事業者の方は、その分収入が少なくなるわけです。財務省では「一部の事業者がもうけ過ぎている。だから報酬を下げるべきだ」との見方があるようですが、一部がそうだからといってすべてに適用していいのか、という疑問も残ります。

また、過去に介護報酬の引き下げを行った後、それが介護職員の待遇悪化につながり、職員が不足する事態が起きました。今回はそういうことにならないよう加算制度を充実させるとのこと。事業者が職員の待遇改善計画を都道府県に提出すれば、職員の賃金にだけ使える加算を受け取れるというものです。ただ、職員は事業者から給料をもらっているわけで、介護報酬引き下げで事業者の経営が苦しくなれば、そうした待遇改善が実施できるものなのかも疑問です。