メーカーの期待がにじむ

デフォルト(default)とは、義務の不履行、怠慢、欠場などの意味だが、金融用語では「債務不履行」として一般に使われている。コンピュータ用語では、利用者が何の設定も行わなかった際に使用される初期設定値のことである。

パソコンは万能マシンであり、ソフトウェアにはさまざまな機能がある。それを買ってきてすぐ使えるようにするには、製品出荷時にあらかじめ具体的な機能が設定されていなければならない。たとえばパソコンのキーボードには、文字キーばかりでなく、さまざまなキーが用意され、そこにいろんな機能が割りふられている。それをユーザーが変更することはできるが、操作が複雑な場合が多く、あるいは面倒だからと、デフォルト仕様のまま使っている人が多い。したがってメーカーなどが設定したデフォルトがたいてい世界標準になる。以前取り上げた「アーキテクチャーによる規制」(http://president.jp/articles/-/13553)と言ってもいい。

このデフォルト設定には「癖」がある。というわけで、サイバーリテラシー・プリンシプル(20)は<デフォルトには「癖」がある>である。

1つは「情報の公開」である。SNSやアプリケーションソフトを使って情報を発信するとして、それをどの範囲まで公開するかで「非公開」、「友だち」、「すべて」などと選択肢がある場合、デフォルトは「公開」である場合が多い。設定に無頓着でいると、すべての人に自分の情報を公開することになる。情報量を増やすためなるべく公開してほしいという、システム側の期待がにじむと言ってもいい。もう1つは「使用」である。アダルトビデオの画面にアクセスしただけで「使用」とみなされ、法外な費用を請求されたという例は多い。店に入っただけで料金をとられるようなもので、これは論外である。