人の表情やしぐさなどからその人の本心や置かれた状況を見抜く能力を、SIQ(社会的知能)と呼ぶ。SIQは心理カウンセラーや医師、刑事、弁護士などの専門家にとって必要不可欠なものだが、一般のビジネスマンもこの知能を磨くに越したことはない。人の心が透視できたら、ビジネスを有利に運べるのはいうまでもないことだろう。

図 鼻はどちらにつける?

SIQを高める訓練の方法を紹介する前に、まずはあなたのSIQをチェックする簡単なテストをやってみよう。図の楕円形を人間の横顔に見立てて、左右どちらか、あなたが自然に感じられる向きに鼻をつけてみてほしい。

いかがだろうか。もし、あなたがAに鼻をつけたとしたら、あなたのSIQは普通かそれ以上のレベルだ。万が一、Bにつけてしまったら、残念ながらあなたはあまり人間観察力がない人である。

理由は、脳の仕組みにある。人間が何かを見ると、その情報はまず前頭前野に入る。ここが刺激を受けると、次に大脳辺縁系の扁桃体という部位に刺激が伝わる。扁桃体が活性化することによって感情が発生し、感情が発生した瞬間に右脳全体が活性化する。右脳は論理ではなく直感の脳であり、右脳が支配するのは左の眼球だ。つまり、人を直感的に見抜く訓練を積んだ人ほどこのサイクルが発達しており、左側から事物や人を見る習慣がついているのである。

図に戻れば、SIQの高い人は無意識のうちに、情報発信をしている対象を左から右に向かってすばやく見る傾向があり、それゆえに鼻を左につけるのだ。右につけてしまうと、左の眼球を後頭部の方向から右側へ眼球を移動させねばならず、ムダな時間がかかってしまうのである。

さて、SIQを高めるには実践的なトレーニングを積む必要があるが、幸いなことにこのトレーニングにはお金がかからない。世の中じゅうがトレーニングの場となりうる。先述した「電車の向かい側の席の人がいつ降りるか」を推理するのもSIQを高める訓練のひとつだが、まったく費用はかからない。