お金のプロが初告白。老親の面倒を見て、初めて気づいた本当に必要なこと。安全、入院、人間関係、家計や家の管理、葬儀、相続……。多くの人が陥りがちな問題もこうすれば解決する。

家族任せにできず自分で無理もできず

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いまや75歳以上の3人に1人が要介護・要支援に!

「お父さんが脳梗塞で病院に運ばれたわよ」

昨年1月、東京の印刷会社に勤める飯田英雄さん(仮名)は、名古屋市近郊で暮らす79歳の父親の異変を実家の近くに住む叔母から知らされた。命はとりとめたが介護の必要な状態だった。

特別養護老人ホームは待機老人が多く入所できず、平日は介護老人保健施設に預け、週末に自宅へ連れて帰るパターンの介護にした。他県に嫁いだ妹と交代で月に2回、新幹線で往復。交通費節約のため、金曜日夜遅くに高速バスで実家に帰ることもあった。時には平日に有給休暇を利用して父のもとを訪れた。5年前に亡くなった母親の介護は妹と父親まかせで、「今度はお兄さんが率先して介護してね」と妹から釘を刺され、遠距離介護を続けた。

東京に呼び寄せることも考えたが、住み慣れた土地を離れることを父親は拒んだ。職場のポストも先が見え、「介護離職」を考えないわけではなかったが、「この年で地元に新しい職があるわけない」と躊躇しているうちに、今年2月、心不全で父親は他界。飯田さんは「短期間で妹との関係も悪くなかったので、不十分ながら父親の介護を続けられたのでしょう」と振り返る。

2012年の総務省調査では、飯田さんのように介護しながら働く人は291万人で、仕事を持つ人の4.5%を占める。一方で、介護で職を失ったり自ら辞めたりした介護離職は、11年10月からの1年間で10万1000人に上る。

日本の65歳以上(高齢者)の人口は3186万人(13年9月)で過去最多。総人口に占める割合も25%で、「4人に1人が高齢者」の時代が到来。東京五輪が開催される20年には、29%に到達する。それにともない高齢者のいる世帯は増え続け、10年現在、世帯数は2071万世帯で、全世帯(4864万世帯)の42.6%を占める。元気な高齢者も多いとはいえ、介護保険で脳血管疾患や認知症などによる介護が必要と認定される高齢者は515万人、75歳以上(後期高齢者)に限れば約450万人(11年度)にもなる。