福島第一原発の教訓をどう生かすか

東日本大震災によって起きた福島第一原子力発電所の事故後、国内の原発48基は順次運転を停止、現在もすべてが運転を停止している。放射能汚染や住民避難、風評による経済的損失を考えれば、無理からぬことだろう。とはいえ、電力供給に占める火力発電への依存は、円安による輸入燃料の割高等を背景に電気料金の上昇につながった。さらに、CO2排出による環境への負荷も無視できない。

東京電力の柏崎刈羽原子力発電所。(写真はいずれも東京電力提供)

この状況を打開するために安倍内閣は、従来以上に安全性に配慮した「新規制基準」を満たした原子力発電所の再稼働を進めていく方針を示した。それぞれの発電所は、福島第一原発の事故直後から安全対策に取り組み、すでに、全体の約4割が原子力規制委員会に新規制基準への適合性審査を申請中で、このうち九州電力の川内原発(鹿児島県)はその審査に合格しており、再稼働されるか注目が集まっている。

東京電力・柏崎刈羽原発でも6、7号機について新規制基準への適合性審査の申請を行っている。新潟県柏崎市と刈羽村にまたがる約420万平方メートルの敷地に1~7号機まで計7基の原子炉を持ち、総発電出力は世界最大の821万キロワット。発電した電気は、中部山岳地帯を越えて首都圏に送られてくる。ここが再稼働に漕ぎつけられる否かが注目されるのは、東電の再建を左右することに加え、今後の原発全体のゆくえを占うからにほかならない。

柏崎刈羽原発では、福島第一原発の教訓を生かした対策が講じられている。福島第一原発の事故が津波によって引き起こされたことから、日本海に面した防潮堤は海抜15メートルの高さまでかさ上げした。さらに、電源設備等への浸水を防ぐために原子炉建屋に付属する防潮壁・防潮板、水密扉を設置。非常用電源が使えない場合に使用するガスタービン発電機車や高圧電源車などを高台へ分散配置した。非常時に原子炉などを冷やす非常用冷却水として容量2万トンの淡水貯水池も高台に設置した。それでも、万一炉心損傷した場合に備えて、格納容器から放出される粒子性放射性物質を1/1000程度に低減するフィルタベントの設置も進んでいる。