Skyland Ventures 木下慶彦
1985年生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、大和SMBCキャピタル(現:大和企業投資)、独立系ベンチャーキャピタル インキュベイトファンドを経て、2012年8月Skyland Venturesを設立。同社代表パートナー。

僕には一人のベンチャーキャピタリストとして、大事にしている言葉があるんです。それは「モスキート音が聞こえるか?」というキーワードです。

いま僕は渋谷の道玄坂に、脳トレゲームアプリBrainWarsを運営する投資先トランスリミット社とともにオフィスを構えています。2014年10月にLINEなどから3億円の資金調達を発表した会社で、まだ社員数は10名弱の規模。そのメンバーたちとオフィスをともにしながら、10席ほどをSkyland Venturesの支援しているベンチャー企業にも提供しているんです。

創業期の起業家とあえて一つのオフィスにいることは、自分にとって価値の高いことだと感じています。「モスキート音」というのは高周波のことで、若い頃には聞き取れるけれど、年を重ねると聞こえなくなっていく音。それと同様に、自分たちの世代だからこそ聞き分けられる音、サービスが生みだされる場所からしか聞こえない音というものがある。彼らと一緒に過ごすことは、その「音」に向き合うということでもあり、ベンチャーキャピタリストとして欠かせない感性を磨くことだとも思っているんです。

VCにはもともと僕が所属していた大和証券グループの大和企業投資などの金融系、KDDIやサイバーエージェントがやっている事業系、そして、独立系があります。僕は大和を辞めて3、4人の独立系VCで1年間働いた後、2012年に自分で独立系のVCを始めました。26歳の時です。

僕はこの会社を、起業家のためのベンチャーキャピタルファンドにすることを目指して始めました。

それらの原点は大学生の就職活動の頃にあったかもしれません。大手の企業説明会に社長が来るということはほとんどありませんが、ベンチャー企業の場合は社長自らが来ることが多いわけです。それで、社長に会えることに興味を持って説明会に行くと、そうした人たちって本当に面白そうに自分の事業の話をする。人生をかけて取り組んでいるかのように話す彼らの熱気に触れるうち、ベンチャーの世界で生きる経営者とつながりのある仕事をしたい、という気持ちが芽生えたんです。それで、ベンチャーの社長と一緒に仕事をできる仕事って何だろうと考えたときに、VCという仕事が出てきた。