面積1割のネクタイが、イメージの9割を決める

大森ひとみ(おおもり・ひとみ)●大森メソッド社長兼CEO、AICI国際イメージコンサルタント協会最高位イメージマスター。武蔵野音楽大学声楽科卒業後、日産自動車に入社。ミスフェアレディとして勤務の後、研修センター講師として人材教育に従事。その後大手人材派遣会社教育部長を経て、1990年人材教育及びイメージコンサルティングを専門とする大森メソッドを設立して現職。 >>大森メソッドのWebサイト http://www.ohmori-method.co.jp/

ご自身がイメージする、あるいは目指している姿が、どこか周囲の人の印象と食い違う経験をお持ちの方もいらっしゃるだろう。「君はいつも袖の2番目の装着ボタンをはずしているね」と上司に注意をされたら、それはボタンのことではなく、互いに無意識ながら“隙”を指摘されている可能性も考えられる。実力はあるのに、見た目のせいでいきなりマイナス点から始まったのでは、せっかくの能力が生かしきれないことになる。

今回は、世界57カ国が加盟する国際イメージコンサルタント協会(AICI)でインターナショナルボードなどを歴任し、世界で9人目の最高位イメージマスターの称号を受けた大森ひとみさんに、「ビジネスにおける外見力」の効果とその生かし方についてうかがった。人に伝える・説得する場面において、相手に信頼されるかどうかに大きく影響を与える「外見力」を鍛える最大のメリットとは、どんなところにあるのだろうか。

「第一に自分に自信が持てるようになります。自信によって自然と背筋が伸び、明るい表情になり、動作がイキイキとし、人と積極的に接することができるようになるのです」と大森さんは話す。伝えたい自分を効果的に伝えられることで、最終的には信頼感につながるという。

大森さんがイメージコンサルティングをする際には、「自分自身を語る力=外見力」の概念のもとに「ABC」から入るという。その内訳は「A=アピアランス(Appearance)外見」、「B=ビヘイヴィア(Behavior)立ち居振る舞い」、「C=コミュニケーション(Communication)」だ。

Aのアピアランスとは、つまり見た目だ。大森さんは「服装のクオリティはとても大事ながら、服飾品が高価であり、品物がよければいいというものではありません。組織やご自身の立ち位置にあわせ、自分の魅力を充分に生かせるような“内面を表出すること”が大切です」と話す。

たとえば、男性のネクタイは全体のコーディネートの1割程度の面積にすぎないが、与える印象は全体の9割になるほど重要であり、その人のイメージ全体を決めるメッセージ性を持つ。よく、アメリカの大統領が選挙のときには政党色を選んだり、はつらつとした印象を作るためには赤を選んだりと、ネクタイの色や柄を大切にしていることからもおわかりだろう。そのため、大森さんは人物の内面を掘り起すべくコンサルティングをすることから始める。

「『ご自身はどのようになりたいですか?』『目指すところはどこでしょうか?』『目標はありますか?』『周囲の方は、あなたをどのようにご覧ですか?』といったご自分の将来のヴィジョンやミッションから、会社が目指すイメージをお伺いしていきます」

こうして、最終的な目標を見極めた上で、そこにたどり着くための道筋をつけていくわけだ。

自分というブランドを確立するために必要なのは「今の自分」と「なりたい自分・思い描く自分」とのギャップを埋めること。それは、人それぞれが持つ“自分が発信したいイメージ”や“ありたい姿”によって決まるため、ひとつの決まったセオリーがあるわけではない。とことん話し合いをしながら「イメージの6つの要素」を整えていくことからうまれるのだ。

では、人前に立つときに必要とされる、大森さんが提示してくださった「6要素」をご紹介しよう。大森さんのコンサルティングを受けることがベストながら、ここでは私たちなりのちょっとした対策も考えてみたい。