ベクトルは、ワールドPRレポートで日本第1位、アジア第2位に位置するPR会社である。西江肇司社長に企業PRの秘訣を聞いた。

スマホを使ってどうやってPRするか

── 国内市場が縮小する中で、ベクトルはPR会社として急成長しています。既存のPR会社との違いはどういった点でしょうか。

ベクトル社長 西江肇司氏

【西江】PRや広報という職種はまるで職人芸のような扱いで、10年の経験があってやっと一人前になるといわれていました。とても効率が悪かったわけです。私たちは、やらなければいけないことを簡素化し、誰もができるように分解し、それに自分たちのアイデアを上乗せするという手法を取りました。結果が一緒であっても、スピードが全然違ってきます。

実は、これまで企業が行ってきた広報PRという手法は、ニュースリリースの、言うなれば垂れ流しだった。それがたまたまメディアの目に留まれば取り上げてもらえますが、無駄撃ちが多すぎる。私たちが採用したやり方は、企業の広めたい情報を世間の流行や出来事とリンクさせ、ニュースとして取り上げてもらえるようにする、いわゆる戦略PRと呼ばれるものです。広告だと思うと、消費者は身構えてしまう。逆に客観的な報道だと、スッと受け入れてもらえる。世間に受け入れられやすい引っ掛かりをつくることが大事なんです。

──PR会社として、これからのPRをどのように捉えていますか。

【西江】ベクトルの経営理念は「いいモノを世の中に広め人々を幸せに」。だから対外的にはPR会社とは名乗っているものの、自分の意識としてはインフラ会社です。効率のいいコミュニケーションで商品のいいところを顧客に訴えかける。最近ではITの進歩がめざましいから、私たちはアドテクノロジー(インターネット広告に関するシステム)を使う。この10月にベクトルは広告配信サービスを手がけるマイクロアドと合弁会社ニューステクノロジーを設立しました。これまでのディスプレー広告から、ウェブサービスに違和感なく溶けこむネイティブアドが重要になってくる。その中で両社の強みを生かしていくつもりです。そしてスマホの普及にしたがって、消費者はスマホで気軽に動画を見るようになっています。そうなると今までのように文字ベースで情報を伝えるのは非効率。無駄にページ数が多くても意味はない。もっとシンプルで、ターゲットに深く突き刺さる動画が重要だと考え、今、大いに力を入れているところです。企業のほうも、動画の重要性に気づいてはいるでしょうが、それをどう活用したら効果的なのかがわからない。