セブン&アイ・ホールディングスの中核、セブン-イレブン・ジャパンの一人勝ちが続く。消費税増税後、コンビニ各社が既存店売上高で前年割れを続けるなか、25カ月連続プラスだ(今年8月現在)。1号店開業から40年。強さの根源を探る。

ネットとリアルで需要を生み出す

セブン&アイ・ホールディングス会長兼CEO 鈴木 敏文氏

【田原】鈴木さんは、「6割の顧客より4割の顧客」だとよくおっしゃる。これはどういう意味でしょう。

【鈴木】仮に、商品の価格の低さを求める顧客が6割いたとします。上質さを追求するより、低価格優先の商品をつくるほうが実は容易です。売り手の大半はそちらを選ぶでしょう。たちまち飽和状態になり、価格競争に陥る。一方、質重視の4割の顧客に対し、上質さを追求できる売り手がニーズに応えれば、圧倒的な支持が得られます。すると、今まで6割の中に入っていた顧客も4割のほうへ移る。今の日本はそんな状態です。

【田原】そうした新しい商品の開発は、どこが提案するのですか。

【鈴木】米飯や惣菜などのデイリー商品の場合、本部のマーチャンダイザーと、ベンダーと呼ばれるメーカー約80社の担当者がチームを組み、提案し合います。ベンダーが全国に展開する工場のうち、セブン-イレブンの専用工場率は9割を超え、他社とは圧倒的な差がある。これは信頼関係の厚さを物語ります。しかし、資本関係は互いに甘えが生じるため、あえて結ばない。もし、ベンダーがわれわれと組んでもメリットがなくなれば離れるのは自由で、逆にベンダーの製造する商品の質にこちらが満足できなければ、取引をストップする。信頼関係で結ばれつつも、緊張感を持ち続けるから、質を追求できるわけです。

【田原】国内市場の先行きについて伺います。人口がどんどん減少し、少子高齢化がいっそう進む。セブン-イレブンの来店客の年齢層も、昔は20代が中心だったのが、今は40代以上が過半を占めるようになったそうですね。社会の変動にはどう対応するのですか。

【鈴木】少子高齢化や人口減少の話題になると、明日にも日本の国が破綻するような論調が聞かれますが、私はそうは見ていません。仮に人口が今の半分になったとしても、半分になったなりに新しいニーズが必ず生まれる。変化に対応さえできれば、日本の経済は持続していきます。

【田原】高齢化に対して悲観論を持つのではなく、新しいニーズ、新しい仕事がどんどん生まれるから、変化がチャンスになると。

【鈴木】高齢化が進めば、遠くまで買い物に行くより、近くですませたい欲求が高まる。さらには配達の需要も増していく。顧客に一番近いところで、近々全国2万店に達する店舗網を持ったセブン-イレブンの仕事はどんどん増えていきます。