泡盛でオトーリ

日本列島は南北に連なっているが、その長さを実感するのは12月のこの時期、琉球諸島や先島諸島などの地を踏みしめたときであろう。

東京・羽田から宮古島まで、直行便で約3時間。冬の宮古島は、「内地」の感覚からすると、4月か5月の頃合いで、吹く風もほんわかと暖かく、木枯らしに慣れて身構えていると気が抜けてしまう。そんな宮古島を訪れたのは、ざっと20年前であった。

とある研究者に会って、誘われるまま、お仲間と合流、「オトーリ」となった。述べるまでもなくこの島特有の献盃儀式であるが、その当時はまだ馴染み薄く、私自身初体験で、各人が「親」となって「子」と一通り盃を交わすという夢のような歓待はまさに盗人に追銭、呑兵衛にオトーリと大感激であった。

宮古島には、うまい泡盛もたくさんある。「菊之露」、「多良川」、「沖之光」、「瑞光」、「千代泉」など、これらを「オトーリ」で一通り飲み干すのが礼儀で、痛風がどうのこうのと、つべこべ言ってはならない。

泡盛の肴となると、沖縄本島でも一般的なラフテー、ミミガー、テビチなど豚肉料理に、黒鯛に似たタマン、ミーバイなどの煮魚に、グルクン。私はこのグルクンの素揚げが大好物で、何をおいてもまっ先に食することにしている。そのグルクンだが、宮古産は赤色が一段と鮮やかで、ことさらに食欲をそそる。

いい心地で酔いしれて、ホテルへ送ってもらう車窓から天空を眺めれば、酔眼にもまばゆい夥しき星々の煌めきで、なんと天の川まで確認できるではないか。

「こんな星空なんて、何年ぶりだろう」

興奮し、寝室からも飽かず眺め、いつしか寝入っていたものである。

翌朝、散歩していて、ふと、切り通しのセメントで固められたのり面を見やると、けっこう大ぶりな、バイ貝そっくりの巻貝が群れなし、取りついているではないか。