英語は他者との「差別化ツール」

ビジネスにおける英語の重要性については、今さら言うまでもないだろう。4年前、インターネット通販大手の楽天が、英語を社内公用語とする方針を打ち出し話題になったのは記憶に新しい。公用語化とまではいかなくても、ここ数年で社員に英語習得を義務付けるようになった企業は枚挙にいとまがない。これまで仕事で海外とやりとりをする機会がなく「自分には英語は必要ない」と高をくくっていた人たちまでが、英語習得を昇進昇格の条件にされている。

では、企業は何をもって社員の英語力を判定しているのか。その答えが、TOEICだ。国内で同テストを運営するIIBC(一般財団法人・国際ビジネスコミュニケーション協会)によると、上場企業の63.2%が何らかの形でTOEICの結果を利用しているという。英語テストとして知名度の高い実用英語技能検定(英検)の6.6%と比べても、その差は歴然だ。

こうした背景から2003年度に約142万人だった受験者数は、この10年で約94万人も増加、昨年度は約236万人に達している。現時点でTOEICが社会人の英語力を測るデファクト・スタンダードとなっている事実は、否定できない。

TOEICで高得点を挙げるにはまず、このテストの特徴を知っておく必要がある。例えば、出題は「リスニング」「リーディング」の2項目からなり、「スピーキング」「ライティング」能力を直接問うものはない。

問題に取り上げられる語彙やテーマは、ビジネス分野に馴染むものが中心だ。大学受験にありがちな文学作品からの引用や、重箱の隅をつつくような難解な問題はまずない。その代わり、短時間に多くの問題をこなすスピードが求められる。

最大の特徴は、受験者が同じ問題を解くことによって「相対レベル」がわかるということだ。このことがTOEICに挑戦しようとする学習者の、教材選びや学習法の大切さ/難しさにつながっている。

書店に行けばTOEICの学習法を指南する本やテキストが、それこそ何十冊も並んでいる。背伸びして実力以上のものを選んでも歯が立たず、逆に実力以下のものを選んでも役に立たないだろう。

短期間で効率よく点数アップを実現するには、実力に応じた対策をとることだ。そこで本項では、TOEIC指導に定評のある講師に、レベル別に最も効果が上がる学習法と教材選びを教えてもらった。