トラブル報告、価格交渉、歓送迎会のスピーチ……。オフィスや取引先、接待の場で成功するための話し方を達人に聞いた。

Case4.脱線した話を戻す
なぜズレるのか。自分のことを理解してほしいから、相手は趣味のことなどを一生懸命話している可能性もある。

「イエス・バット法」で相手の肯定から入る

「商談にしてもプレゼンテーションにしても、やはり大切なことは相手に信用してもらうことです。もし、途中で話が脱線してしまって、相手の方が自分の大好きなゴルフの話をし始めたとしたら、それは私に対してオープンなマインドを持ち始めてくれたことの表れかもしれません。それなのに無理やり話を元に戻そうとすると相手の気分を害してしまい、まとまる可能性のあった話をご破算にしてしまいかねないので、細心の注意が必要です」

プレゼン巧者である1st Avenue代表のマンジョット・ベディさんはこのようにいう。

確かに、相手は自分のことを理解してもらいたいから好きな趣味のことを話したり、一緒に喜びを分かち合いたいがために自慢話に近いようなことを話し始めるのかもしれない。にもかかわらず、その話の腰を折るようなことをしたら、「こいつは俺のことを拒絶した」となり、その後はどんなにいい内容の商談やプレゼンをしたとしても、耳を貸さなくなってしまうだろう。

その点に関して同じ意見を持つ、ECサイト「ロコンド」代表取締役の田中裕輔さんが提示する解決方法が「イエス・バット法」である。

「否定形から入ると、どうしても相手の方の心証を悪くしてしまいます。そこで一つのテクニックとして、『そうですね』と相手の話を一度は肯定したうえで、『ところで』と話を切り返しながら本題に戻すようにするのがベストな方法ではないかと考えています」

イエス・バット法を活用する際に田中さんが重要なこととして考えているのが、前項で触れたクライアントに伝えるべき物事の本質的な部分をしっかり把握しておくこと。ここがあやふやであると、どこに話を戻してよいのかがわからず、相手の話に押し返されてしまう可能性が高いからなのだ。その意味でも事前の準備を十分にしておくことが重要になってくる。