企業経営者の社会的な役目、これは何はともあれ、雇用の保障。すなわち仕事を作ることである。

<strong>西日本高速道路会長兼CEO 石田 孝</strong>●1943年、福岡県生まれ。66年神戸製鋼所入社。取締役、専務を経て2002年コベルコ建機社長。04年コベルコクレーン社長。05年西日本高速道路会長兼CEO。06年西日本高速道路サービス・ホールディングス会長CEO兼任。
西日本高速道路会長兼CEO 石田 孝●1943年、福岡県生まれ。66年神戸製鋼所入社。取締役、専務を経て2002年コベルコ建機社長。04年コベルコクレーン社長。05年西日本高速道路会長兼CEO。06年西日本高速道路サービス・ホールディングス会長CEO兼任。

そのためには、絶対に黒字を出さなくてはならない。そして、その黒字をもって、時代が求める新たな「職場」を創り上げる。こうした事業を行なっていくことが、経営者の責任だと私は考えている。

だが同時に、企業経営は単に黒字を出せばいいというものではない。そこには、社員がこの仕事のためなら、全力を出して働きたいという社会貢献(CSR)的要素を含んでいなければならない。

ビジネスそのものが社会貢献となり、更に利益を生み、新たな雇用も生む。これが理想である。

では、何をどう行なえばいいのかと考えていたとき、最近、印象深い本と映画に出合った。

一つは、2006年度にノーベル平和賞をもらったムハマド・ユヌス氏の「貧困のない世界を創る─ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義」である。ユヌス氏は、バングラデシュにあるグラミン銀行の総裁だが、大型の資金を企業に貸すのではなく、20ドルとか30ドルといった無担保少額融資(マイクロクレジット)を、主に農村部の貧しい女性達に行ない、ヨーグルトの販売などの自立のための開業資金としている。

彼の事業のパートナーとなっているのが、フランスの食品会社で世界第2位の売り上げを誇るダノングループだ。我国でも、ヨーグルトや水のエビアンの販売でよく知られている企業である。

このダノングループが、安価なヨーグルトを販売し、その収益をITや携帯電話事業に再投資していく。その収益を元に、新たな事業を創出する。これが「ソーシャル・ビジネス」の考え方だ。ソーシャル・ビジネスの目的は、株主の利益の最大化ではなく、会社を持続可能にする収益を保ちながら社会的利益の最大化を実現するものだ。このソーシャル・ビジネスは、CSRや慈善事業に代わる、新たな企業経営の概念として、世界的注目を集めている。