「10月は相場が荒れる」というジンクス通りに、日経平均は9月25日に年初来高値1万6374円をつけたあと急ピッチな調整となった。株式市場にいったい何が起きたのか? 例年この時期に見られるファンドの換金売りに加え、米国のQE3(量的緩和策第三弾)終了前にポジション調整をする動き。そして、ヨーロッパ経済を牽引してきたドイツの景気後退などが主因と見られるが、エボラ熱の感染拡大が世界経済に対する不安材料となった。

米国で初感染が報告されると“エボラ・ショック”はさらに拡大。全体相場にマイナスの影響を与えるなか、投資家の関心は治療薬や防護服といったエボラ熱対策の企業へ向かう。米国でバイオ医薬品メーカーのアイバイオを筆頭とした関連銘柄が急騰したのである。日本市場でも物色が広がり、エボラ熱の治療に傘下の富山化学工業が開発した抗インフルエンザウイルス薬が有効と伝えられた富士フイルムなどが買われた。なかでも防護服を手掛けるアゼアス、クリーンルームやエアーシャワーを展開する日本エアーテックが人気を集め、連日ストップ高となった。これは中小型株ゆえの値動きの軽さによるものだが、主力株が軟調な展開のなかで短期資金が集中しやすく、やや行き過ぎた反応を見せたともいえよう。その後、出遅れ株として帝国繊維が急騰するなど物色の裾野が拡大。今後も事態の収束までは、関連ニュースに反応しそうだ。仮に日本国内での感染が確認された場合は関連銘柄の人気再燃が予想される。半面、欧米での感染が止まれば関心が薄れていくだろう。

一方、今回の“エボラ・ショック”において旅行客の減少懸念や出入国の規制強化などにより需給が悪化した空運株は値を下げた。実はこのような株価動向は2003年アジアを中心にSARSが流行したときと酷似している。当時も日経平均が大きく下落した一因となり、マスクなどの関連銘柄が買われ、空運株が売られていた。市場参加者は心の備えとして「パンデミック・リスク」発生時の値動きの傾向を理解しておくべきだ。

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