生命保険協会が発表した2014年7月の保険料収入は、前年同月比4.3%増の2兆9588億円と、4カ月連続で前年実績を上回った。好調なのは、貯蓄型の個人向け年金保険などだ。

全体として、保険加入者数は堅調に推移しているが、その中身は数字ほどよいわけではない。貯蓄型の年金保険などは、数十年分の保険料が入ってくるので売り上げとしては上がるが、収益性は高くない。一方、従来の掛け捨ての保障型保険は、売り上げは少ないが収益性は比較的高い。率直にいうと、収益性の高くない貯蓄型が売れて、比較的収益性の高い保障型の売れ行きが伸びていないというのが実情だ。

4大生命保険といわれる日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命を経営戦略の視点でみると、いずれも国内市場では目立った動きはない。しかし海外事業では、第一生命が6月に米プロテクティブ生命を約5822億円で買収するなど積極的だ。海外比率が大きく高まり抜本的な変化を遂げようとしている。

ほか3社は相互会社だが、従来相互会社であった第一生命は10年に株式会社に変更、上場している。これによって機動的な資金調達を可能にし、海外事業の拡大へと大きく舵を切った。株主利益の極大化を目指す株式会社に対し、相互会社は保険契約者のための経営を行うことから、積極的な成長戦略はとりにくい側面がある。第一生命以外の3社も海外事業を手掛けてはいるが、事業の拡大というよりは、運用収益の極大化といった意味合いが強い。

しかし、国内の人口減がより進行すれば、当然、保険市場も縮小する。そんな中で第一生命の海外戦略が成功すると、3社との間に大きな差が生まれる可能性もあろう。第一生命の動きは、今後の生保業界を占ううえで大きな要素となる可能性を秘めており、動向を見守りたい。

(構成=衣谷 康)
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