日本経済は消費税増税の逆風を乗り切り、株価は再び上昇局面に入ったようだ。2020年の東京オリンピックを控え、各社、攻めの経営が目立つ。少子高齢社会のなかで、企業はどこへ向かうのか。新たに経営トップの座についた人物を解剖し、未来への展望を開く。

少数で営業力を高めるウルトラマジック

ようやく長期低迷から抜け出し、2年連続増収を記録した百貨店業界。だが、集客力の低下、利益率の低さといった長年の課題も残る。業界第3位の高島屋は、木本茂社長の舵取りのもと、グループ会社・東神開発のノウハウ活用と海外事業の強化で低収益からの脱却を図る。

高島屋代表取締役社長 木本 茂氏
――印象に残っている仕事は?

【木本】2007年から3年間、新宿店の副店長をつとめていたときに断行した構造改革だ。新宿店は開店以来ずっと赤字が続いていたため、新宿店の社員約250名を他の店舗に転出し、販管費を削減した。ただし、営業力の低下を防ぐため、全店から優秀な人材を集め、少人数で切り盛りできる体制をつくった。利益が出やすい筋肉体質が整ったと思う。個々の能力も大事だが、私は組織で動いていく力を重視している。全社の叡智を結集して実施した構造改革は社歴の中でも一番のターニングポイント。新宿駅は再来年に向けて新南口の工事が進んでおり、市場の拡大が期待できる。やはりマーケットが活性化している立川とこの新宿は重点エリアだ。

――街づくりの発想を百貨店に生かすという経営方針の実行は。

【木本】ショッピングセンターの開発を行う子会社、東神開発のノウハウを活用する。グループ全体の営業利益290億円のうち、東神開発の利益は約3分の1。収益性が高く、玉川高島屋S・Cや流山おおたかの森、シンガポール高島屋の専門店部分など、海外も含めて50年にわたり専門店事業を手掛けてきたので、商業施設をプロデュースする力に長けている。文化発信基地としての百貨店をブラッシュアップしつつ、我々のDNAを持ったデベロッパーの目で商業施設全体の魅力を高めていきたい。この4月には新宿店の運営を考えるプロジェクトを東神開発と共同で立ち上げた。百貨店をキーとした長く滞在したくなる街づくりを進めていく。