日本が元気を取り戻すためには、グローバルよりローカル経済圏の立て直しが欠かせない――。そう主張するのは、経営共創基盤CEOの冨山和彦氏。なぜローカルが日本経済復活のカギを握るのか。田原氏が核心に迫る。
冨山和彦氏

【田原】日本経済を論じるとき、これまでは大企業と中小企業という捉え方が一般的でした。ところが冨山さんは大企業と中小企業で分けるのではなく、グローバルとローカルで捉えるべきだという。この視点は新鮮です。さっそくうかがいますが、グローバル経済は日本のGDPでいうと、どれくらいを占めていますか。

【冨山】じつは小さくて、3割程度です。雇用でいうと約2割。裏返すと、日本の8割の人はローカル経済で食べています。

【田原】どのような企業をグローバル、あるいはローカルというのですか。

【冨山】グローバルの典型は貿易財をつくっている製造業です。あとは、いわゆる世界的なIT会社。情報は瞬時に世界に持ち運びできますから。一方、ローカルは小売業や卸売業、介護や医療の社会福祉系サービス、建設や不動産、運送、宿泊など。金融機関も大半はローカルです。私たちの身の回りのほとんどはローカルだと思って差し支えありません。

【田原】冨山さんは、ローカルが活性化することで日本はよくなるという。グローバル企業が成長するだけではダメですか。

【冨山】グローバル経済圏は、競争がとても激しい世界です。サッカーでいえばワールドカップです。そのレベルで戦うとなると、グローバル企業は、世界で一番いいところでつくって、いいところで売るようになる。いわゆる空洞化です。

【田原】工場を海外に移すわけだ。

【冨山】そうです。日本のGDPは、いま世界の中で7%を切っています。グローバル企業がそれに合わせて自社の設備や人員を配分するとしたら、日本に割り当てるのはせいぜい1割でしょう。そういった企業が日本で大きな雇用を新たに創出するのは考えにくい。つまりグローバル化が進むほど、ローカル産業でメシを食う国民の比率が高まっていくというパラドックスが起きるのです。これは日本だけでなく、成熟した先進国に共通した傾向です。アメリカやドイツでもローカル経済の比率は高まっているし、早晩、中国や韓国でも同じことが起きるでしょう。

【田原】なるほど。

【冨山】もう一つ、グローバルの会社が必要とする人材は高度すぎるという問題もあります。ワールドカップを観るのは楽しいけど、大半の国民からすると、参加できない遠い世界。そういう意味でも、本当はローカルのほうが大事です。