孫正義氏がこれまでに経験したタフな場面をケーススタディの形で完全再現。
あなたは正しい判断を下せるだろうか。

Q. 回線修理のためNTTに行くと警備員が制止

2001年6月、ソフトバンクは固定ブロードバンド「ヤフーBB」を立ち上げた。NTT所有の電話回線の中で、音声通話に使われていない高周波数帯を活用して高速データ通信を実現するADSLというサービスである。このプロジェクトにかけてきた孫だったが、サービス開始直後に「ネットにつながらない」といった問題が発生。A案は、お客様の信頼を裏切らないためにも、違法を承知でNTTの局舎に侵入する。B案は、法律は法律と、しばらくユーザーに不都合を強いる。

【A】社員と共に強行突入【B】許可が下りるまで3日間待つ(正答率70%)

社運をかけて立ち上げた新事業だけれど、資金不足に陥るだけでなく、次から次へとトラブルの波が押し寄せてくる。このままでは暗礁に乗り上げ、企画倒れとなる可能性がある、と早期に撤退するか。いや絶対にニーズはあるはずだと継続するか。

そんな重要な舵取りのシーンです。世界一速く、世界一安い高速インターネットを実現しよう。ソフトバンクがブロードバンド事業を本格的にスタートさせて数カ月経った頃、担当者に僕が直接確認すると、開通のための作業がほとんど進捗していなかったことが判明しました。これには怒りがこみ上げました。

「よし、俺が陣頭指揮しよう」

僕は当時のソフトバンク本社ビルから「今日からこの部屋(社長室)を出る。当分ここには戻らないし、社員にも会わない」と言い残して、向かい側にあった雑居ビルの狭い一室にエンジニア5、6人と、夜中まで働き詰めになりました。秘書には、大事な客を含むすべてのアポをキャンセルさせました。

「殿、ご乱心か」

多くの役員や社員が僕の行動を訝しく感じたようです。でもそんなことにかまってはいられません。ブロードバンド事業専任の社員、営業、エンジニア、管理……。さまざまな分野の人材を「3日で100人揃えろ」と人事部長に命じると、「そんなの無理です」。それでも、「かまわん、無理でも集めろ」と無茶を承知で言うと、本当に3日後に、グループ会社から100人が集まりました。なせばなるのです。