会社更生手続き中の日本航空(JAL)が11月15日、パイロットと客室乗務員ら最大約250人を対象とした整理解雇実施を決めた。希望退職が目標人数に達しなかったためで、同月末の東京地裁の更生計画案認可を目前に、避けられない措置と判断したようだ。

労組との紛糾は必至だが、それ以前に更生計画案そのものの実現可能性を疑問視する声も少なくない。リストラを進行させる一方で、責任を取ることなく居座り続ける旧経営陣への風当たりも強く、LCC(格安航空会社)との競合にさらされる外的環境も順風とは程遠い。

「企業再生支援機構は、無理やり債務超過を算出して更生法を適用させ、100%減資で旧株主を切り捨て、再生後に高値で売却するつもりでは」――今年2月、一部の個人株主が立ち上げた「JAL株再生協議会」「JAL株被害者46万人の会」委員長であり経営コンサルタントの猿渡登志一氏は、「ライツ・イシュー(再上場まで転換禁止の停止条件つき新株予約権の無償割当)」での更生を主張する。

「2002年に民事再生法適用を申請した北海道国際航空(AIR DO)の再建に使われた手法です。これなら支援機構が100%株主となってガバナンスを発揮し再生を推進。再上場の際は、旧株主が新株を払い込むことで血税1兆円を肩代わりできます」

猿渡氏らが激怒する理由の一つに、前原誠司前国交相に「ゾンビみたい」と一蹴された株主優待制度の打ち切りがある。

一見当然だが、JALの個人株主は、同時に重要な顧客でもあった。

「年間の搭乗者数の約8%(09年)に当たる215万回、一人当たり同4.7回も利用する優良顧客です」(猿渡氏)

多くが地方在住で、自身や家族の上京時に、株主優待券を使ってチケットを半額で購入する。自宅の福岡市内から東京の音大に通う子息のために8万9000株を購入した猿渡氏は、その典型だ。

「支援機構には、1999年に破綻した日本長期信用銀行を買収した米ファンドのメンバーがいる。国有化か再上場でなければ、海外資本への売却という筋書きが出来上がっているのでは」――“最大のファン”にここまで不信感を抱かせたJALの未来は?