就職難で“正社員メンバーシップ”に入れてもらえず、キャリアアップの望み薄な低賃金のポジションに甘んじ続ける若年層――世間の抱く非正規社員像はそんなところだが、ここにいつしか40代男性を散見するようになった。日本の“失われた時代”の長さの証拠だが、企業に必要な人材か否か以前に、そのコストの調整弁扱いされる彼らは、人生の折り返し点を過ぎた今、何を思うのか。
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高田さんの家計簿
◎女性を口説くなら、「保険かけるから一緒にならへん? 20年以内に死ぬで」
都内繁華街近くの自宅マンションで撮影。「近くにギャンブル場がない。あれば絶対行ってる」あるとき、社内で見た某工事契約額の内訳によれば、高田氏の取り分は約2000万円となっていたというから、搾取ぶりも半端ではない。「もう、腹立つの超えてるわ(笑)」たまに大阪の兄夫婦のもとへ。性欲は残ってなくもないが、風俗関係は大阪でまとめて処理する、という。

「土・日を問わず、夜はほぼ毎日飲み。男一人、この年になってもすることないでしょ。飲んでなきゃやってられない」――大手建設の下請けの契約社員、高田信吾氏(仮名、49歳)は苦笑する。

「正社員はあきらめてます。10歳年下の正社員に年収で負けてる。夢はありません。一人のまま死ぬんだな」との呟きは冗談に聞こえない。

契約は1年更新。建前上は設計図の管理などが主業務だが、実際は何かと現場へ駆り出されての肉体労働である。

「プロパーの人間が仕事しない分、契約がこき使われる。奴隷みたいなもん。仕事は結局下へ下へ下へ、投げて投げて投げて、だから。現場では最年長だけど、親会社の年下の社員から指示を受けます。彼らは敬語なんか使いませんね。古いし、荒っぽい業界なので」

独身で年俸約550万円。諸々引いた月々約20万円が小遣いといえば小遣い、食費といえば食費。

朝はコンビニのパンか、牛丼チェーンなどの200~300円の格安モーニング。昼は事務所で取る仕出し弁当が450円。「ちょっと高いわ」。幸か不幸か、根城の賃貸ワンルームが都内繁華街から徒歩圏にある。「飲みは3000円程度に何とか抑えます。最近いい立ち飲み屋を見つけたんで、今はもっぱらそこ。飲んで、気絶して、寝る、みたいな」。1日の食費は5000円以内が目標だ。「いいバイトを探してるんですが、なかなかなくて」。