今、活況を呈している数少ないカテゴリー「プレミアムビール」。
価格を高めに設定した高付加価値の「プレミアムビール」。サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」が主導し、サッポロ「ヱビスビール」が鎮座するこの市場に、昨年からアサヒビール、今年はキリンビールが新たに参入し、ギフトを中心に苛烈な販売競争が始まっている。
ただ、一様に“プレミアム”を名乗ってはいても、各社が持つバックグラウンドはおのおの異なる。大手4社の営業マンたちの奮闘ぶりを主眼にその違いをレポートする。

もともとプレミアムだった「一番搾り」

布施はグループ内の小岩井乳業社長から現職へ。「小岩井の高級感、上質感をお客様に感じていただくにあたって、ギフトの役割は大きかった」と振り返る。「今、商品の動向が二極化している。価格競争じゃなくて、価値への競争に変わっていく流れがあるのでは」。

「我々は『一番搾り』をデイリープレミアム、『一番搾りプレミアム』をスペシャリティープレミアムと呼びます。一番搾りは、二番搾り麦汁を使わないという贅沢な造り方をしています」

キリンビールマーケティングの布施孝之社長がそう胸を張る。

ビールは麦芽を煮込んで糖化させ、そこにビール酵母を加えて発酵させてもろみにし、そのもろみから麦汁を搾って造る。通常のビールの場合は、一度麦汁を搾ったもろみにお湯を加えて再び麦汁を搾る。

ところがキリンの一番搾りは、一番搾り麦汁しか使わない。だから麦芽を使う量が一般的なレギュラービールよりもはるかに多い。いわば、「プレミアムビールのスペックを持つレギュラービール」なのだ。

その一番搾りのプレミアムビール「一番搾りプレミアム」は、昨年のアサヒに続いて今年からプレミアム市場に参入。他社とは異なる330ミリリットルの瓶入りで、第一級のホップをじっくり漬け込む手間をかけ、ドイツのビール職人の称号(ブラウマイスター)を得た者が醸造するという。ただ、ギフト限定で通年販売の予定は今のところないという。

なぜ、「一番搾りのプレミアム版を大々的に売る」というシンプルな商品構成を組まないのか。その理由は、どうやらその「一番搾り」の高スペックじたいに起因するようだ。

「1990年の発売当時、少し高い値段で出そうという議論があったようです。しかし、当時はプレミアム市場が存在しなかったので、高コストだけれどより多くのお客様に喜んでいただきたいという思いでレギュラービールとして出した経緯があります」

「一番搾りこそプレミアムなのだ」というキリンの自負が垣間見える。それゆえ、「一番搾りプレミアム」はギフト限定に留め、一番搾りへと客を誘うきっかけにするのだという。

「お客様に高級感・上質感を感じていただくのに、ギフトの役割は大きい」