世間のことがある程度わかった大人になってから、受験科目を見直してみると、なかなか知的好奇心をくすぐるものがある。もはやテストの心配もない。「大人の教養」を楽しんで身につけてみませんか?

産業から紛争まで世界を読み解く鍵

東進ハイスクール講師 山岡信幸 
図解と統計の解説がわかりやすいと受験生の支持を集める。著書『山岡の地理B 教室』は地理受験参考書のロングセラー。

地理を学び直すと今、国内外で起こっていることを、より深くリアルに知ることができます。

たとえば最近、緊迫の度を増しているエジプト情勢。新聞やテレビは反政府デモ隊を治安部隊が銃撃し何人が死亡したといった報道が主です。デモの原因にしても、ムバラク独裁政権への不満やそれに乗じようとするイスラム過激派の存在など表面的な部分だけがクローズアップされることが多い。

しかし、この背景にはさまざまな原因が複雑に絡み合っています。

有名なアスワン・ハイ・ダムは、ナイル川の上流に氾濫防止と灌漑用水の確保を目的に建設されました。しかし、巨大ダムの完成により下流域への肥沃な土壌の供給が減り、灌漑農地では多量の化学肥料・農薬の投入が必要となりました。このような問題を背景に貧富の差が拡大し、民衆に不満が高まってきた側面もあるように思えます。

各国の地理に起因する事情を知るのに最適なのが『最新世界情勢地図』。現在の世界が形成された経緯から、グローバル化の現状、宗教やエネルギーのデータなどが地図や図表を多用してわかりやすく解説されています。類書は多いのですが、これが一番優れています。

「それぞれの国から見た世界」の項では、日本はもとよりベルギー、韓国、メキシコ、イランなど28の国と地域から見た世界を解説しています。各国にはそれぞれ特有の事情があり、その視点に立たないと世界の実像は見えてきません。

手元に置いておくと役に立つ本です。