世界3大ブランドグループの「進化の歴史」

グッチ2014-2015年秋冬コレクションで発表されたハンドバッグ「ジャッキーソフト」

グッチ、サンローラン、ボッテガ・ヴェネタ。ケリングは、世界中に多くのファンを持つラグジュアリーブランドの「親玉」だ。

傘下に持つブランドは22。冒頭に挙げたブランドのほか、バレンシアガやブリオーニといった歴史あるファッションブランドもあれば、ステラ・マッカートニー、アレキサンダー・マックイーンといったクリエイティビティに富んだコンテンポラリーブランドもある。アスリート向けシューズにとどまらず、服やアクセサリーにまで守備範囲を広げるライフスタイル系スポーツブランド、プーマもまたケリングの一員だ。13年度には97億4800万ユーロ(1兆3647億円)の売り上げ、17億500万ユーロ(2450億円)の営業利益を達成し、アパレルとアクセサリーのカテゴリーでは圧倒的なグローバルリーダーであり続けるケリングは、「ブランド帝国」という称号がふさわしい。

だが、華やかな顔に目を奪われて、ルイ・ヴィトンやディオール、ブルガリを擁し、281億円ユーロ(3兆9340億円)を売り上げるLVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)や、カルティエやダンヒル、ランセルやモンブランなどを抱え、101億円ユーロ(1兆4140億円)を売り上げるリシュモンと同列に語っては、その本質を見失う。

世界を股にかけたラグジュアリーブランドを多数展開しているという点では3者ともよく似ているが、ケリングは単なる高級ブランドの総合体ではない。金にあかせて世界中からラグジュアリーブランドを買いあさるコングロマリットでもない。基幹事業をあっさりと手放し、ドラスティックな転身をなしとげたケリングの歴史は、時代を読み、市場を見つめ、脱皮を繰り返してきた「進化の歴史」そのものだ。

ケリングの創業は1963年。創業者のフランソワ・ピノー氏は、木材取引会社を出発点に、90年代に入ると百貨店のプランタンや家電店のフナック、家具店のコンフォラマ、通販業のラ・ルドゥートやブライレーンなどを次々に買収。事業規模の拡大に成功した。13年までのケリングの社名がPPR(ピノー・プランタン・ルドゥート)だったことからもわかるように、中心事業は流通・通販事業。ターゲットは一般大衆であり、「高級」とも「ラグジュアリー」とも無縁の事業だ。誤解を恐れずに言えば、ここまでのケリングは“フランス版イオングループ”のような存在だった。

それが一変するのは99年。LVMHとの争奪戦に勝利しグッチを手中に収めたのを皮切りに、サンローランやバレンシアガなども次々に買収し、PPRの名前は世界中に轟いた。ラグジュアリーブランドの世界にPPRあり……。だが、この路線を突き進むとみられたPPRは、06年に入ると経営の舵取りを大胆に変える。