「目的に到着できない可能性があります」

「2016年までに世界で累計150万台のEVを売る」――というカルロス・ゴーン社長の当初の目標は到底達成不可能ということで昨年風呂敷が畳まれてしまったものの、世界で最も多く売れているEVという称号は勝ち取っている「リーフ」で、1014kmのロングドライブを試してみた。前編ではリーフの航続限界や走行性能についてレポートした。後編ではEVが苦手とする充電インフラの密度が薄い地方部の走行を含め、使用感をお届けする。

新潟・小出から福島・会津若松へと通じる国道252号線。

新潟・六日町の日産ディーラーで充電率を91%まで回復させた後、米どころとして知られる魚沼から国道252号線、通称「雪わり街道」を経由して福島の会津若松に向かった。CHAdeMOホームページで充電器の所在を調べたところ、新潟の小出を過ぎると会津若松まで急速充電スポットはゼロ。

六日町から会津若松までは山岳路を含め約160kmのマイレージ。リーフの航続距離を考えるとハードルは高いが、途中、ほとんど信号がなく電費(電力消費率:1kWhあたりの走行距離)の面では有利なのではないかと予測し、エコランを頑張ることを前提にこのルートを走ることに決めた。ちなみに会津方面への道はもうひとつ、奥只見ダム、裏尾瀬を経由して会津田島に向かう国道352号線ルートがあるが、こちらは距離が長いため、リーフでは走破できない。

コシヒカリの作付けを終えた豊饒の地、魚沼の小出から252号線に入ってをしばらく走ると、道路案内板が見えた。「会津若松127km」という表示に対し、その時点での後続残は140kmほど。この後続残の数字はそれまでの走り方を考慮した推算値で、絶対にそれだけしか走れないということではないとはいえ、若干の不安は禁じ得ない。

破間(あぶるま)川沿いの大白川という集落を過ぎると、いよいよ山岳区間に入る。国道と並行するJR只見線も次の只見駅まで20.8kmも駅がない(途中駅があったが現在は廃止)という“秘境”で、直江兼続が上杉家の越後・会津国替えのさいに通ったことから「六十里越」の異名を持つエリアだ。

節電のためエアコンを切り、無駄な加減速を極力避けて走ったが、峠へのアプローチはかなりの急勾配で、バッテリー残量はみるみる低下していく。群馬県三国峠のときと同様、途中でカーナビが「目的地に到着できない可能性があります」と音声アラートを出してきた。三国峠では目的地以外にも急速充電スポットがあったため、万が一のことを考える必要はなかったが、今回はそうはいかない。