「自分たちで独自のものをつくって勝負していく!」……。社員が生き生きと働き、元気がある企業にはこうした特徴がある。東海3県の元気ハツラツ企業を徹底レポートする。

30カ月待ちのフライパン

三重県木曽岬町に錦見鋳造という会社がある。この会社は、あるヒット商品のおかげで猫の手も借りたいほどの忙しさだ。その商品とは「魔法のフライパン」で、サイズによっては価格が1万円以上するにもかかわらず、毎日30~50件の注文が舞い込む。多い日には1000件を超えることもあるそうだ。

「お客様からはフライパン以外にもいろいろな調理器具をつくってほしいと言われています」と話す錦見泰郎社長。

「手づくりのため、多くても1日100個つくるのが精いっぱいで、現在30カ月待ちの状態です。2002年の発売以来、ずっと1年以上待ちの状態が続いています」と社長の錦見泰郎氏は嬉しい悲鳴を上げる。

なぜこれほどまでに人気があるかというと、料理が美味しくできるからだ。鋳物材料に含まれる炭素の遠赤外線効果で表面全体が均等に熱くなり、効率よく熱を伝えるため、食材のうまみ成分を逃がさないのだ。また、使えば使うほど油が鉄と炭の隙間に浸透し、表面に皮膜を形成するため焦げにくい。このため、主婦の間で大人気を呼んでいるわけだ。

「魔法のフライパン」シリーズ。以前、名古屋空港の土産店で並べたら、外国人が次々に買っていった。

それは海外でも同様で、調理器具の展示会に出展すると「奇跡のキャストアイロン」ということでブースの周りには人垣ができるほど。もちろん、引き合いも多く、展示会後には電話やメールがひっきりなしに来たそうだ。

「海外でも絶対に売れる自信がありますが、まずは国内のお客様が優先です。お待たせしている日数が10カ月を切ったら、海外展開をしていこうと考えています」と錦見氏。

このように大ヒットを続ける魔法のフライパンだが、この開発の裏には、実は取引先が放った屈辱的な言葉があったのだ。同社は主に自動車や重機の部品を製造していたが、バブルがはじけたある日、取引先から30%の値下げを通告され、こう言われた。

「嫌ならやらなくてもいい。代わりならいくらでもいるんだ」