断るまでもないことだが、組織の上に立つことが、そのまま「束ねる」になるわけではない。
 「束ねる」と呼ばれるには「内実」が必要である。内実とは何か。それは、組織が「目的を共有する、主体性を持った個人の集合」になっていることだ。リーダーが掲げるテーマに共感し、主体的に関わろうとする。そういうメンバーが多数生まれた状況である。換言すれば、束ねる力とは「他者を巻き込み、その内面に主体性を生み出す力」なのである。
 それは容易ではない。人はリスクを嫌う。主体的に新しいことに立ち向かわせるのは、並大抵の手腕では困難である。
 これから紹介するのは、その困難に挑んできた経営者たちが見出した「束ねるための秘伝」である。認識・関係・環境・人格の4つのアプローチに分けて、それぞれの方法を検討してみよう。

合併時に断行した全社研修の真意 -和田洋一

和田洋一●1959年、愛知県生まれ。東京大学法学部卒。2000年スクウェア(現スクウェア・エニックス)入社。01年社長兼CEO就任。03年の合併時に社長就任。

チームで仕事をする場合、自分の部署以外にも多くの人たちが関わってきます。例えば、ゲーム一つ作るにしても、プロデューサー、ディレクター、デザイナー、プログラマーなど、多くの職種の人が協働しなければなりません。しかし、他部門が何をやっているかを知る機会は少ない。多くの企業で問題となっているのは、他部門への理解が及ばない結果生じる、部門間の衝突ではないでしょうか。

当社は、2003年、スクウェアとエニックスという業界大手の2社が合併して誕生しました。06年、全社単位の研修をはじめて実施したのですが、テーマはまさに部門間の協調性でした。目的は、各部門のマネジャーにわれわれのビジネスの全体像を把握してもらうことです。

かつては、ゲーム・プランを発案し、実際の制作に入り、完成した暁には流通経路に商品を流し、広告・宣伝を打ち、最終的に顧客が購入してくれるまでの全体像が共有できていないばかりに、業務の至るところで微妙な齟齬が生じていました。自分たちの仕事の前後にどんな工程があり、それらの部署はどんな意識で仕事をしているのか。彼らの仕事をもっとやりやすくするためには、自分たちはどうすればいいのか。研修では、ごくごく基本的なことから学んでもらいました。