夜なかなか眠れない。眠っているつもりでも実は熟睡できていない……。そのせいで、昼間あくびを連発していませんか。眠くて仕事に支障が出ていたら、すでに危険信号です。

「睡眠」に悩む人が増加している。

それに呼応するように、この4月、厚生労働省は2003年に策定した「睡眠指針」を11年ぶりに改定した。新指針では若年・勤労・熟年の3世代別に睡眠の注意点やアドバイスが盛り込まれた。多忙な勤労世代には、「睡眠不足は結果的に仕事の能率を低下させるため、十分な睡眠を」と呼びかけ、「日中の眠気」が睡眠不足のサインだとしている。

近年、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」が原因とみられる事故が頻繁に報道され、睡眠障害の問題がクローズアップされてきた。SASは特に中高年男性に多いとされ、まさに勤労世代を不安にさせる病である。実際、日中の激しい眠気に悩まされて医療機関を受診し、この病が判明する男性は多いという。

あなたのその眠気の裏に、深刻な病気が隠れている恐れがある。たかが睡眠と片付けず、気になる症状をチェックしてみよう。

睡眠にまつわる研究は、21世紀に入ってどんどん進歩し、睡眠障害の治療法も大きく変わりつつある。睡眠について正しい知識を学び、適切な判断と対処を行えば、「快眠」は必ず訪れるはずだ。

「不眠大国ニッポン」は本当か?

「わが国の5人に1人は不眠症。日本は不眠大国だ」という文言を、テレビや新聞でよく見聞きする。これは本当なのだろうか。もしそうだとしたら、快眠のためにはどんなことに気をつけるべきなのか。国立精神・神経医療研究センターの三島和夫氏に話を伺った。三島氏によれば、不眠症が増えているとは言い切れないという。

「5人に1人、つまり全国民の20%が不眠症だという数字は、2000年に行われた厚生省(当時)による『保健福祉動向調査』が根拠になっています。これは3万人を対象にした大がかりな調査でしたが、設問が『不眠症状がありますか』というように範囲を広くとったものだったため、実際に不眠症で困っている人の実数より多めに出てしまった可能性があります」