食事のとき、何気ないクセや思いこみで相手を不愉快にさせていないだろうか。マナーとは、相手と気持ちよく食事をするための手段であり、おいしく食べ進めるための合理的な手段でもある。一流店の作法を覗いてみよう。

堂々と希望を伝えることも大事

銀座久兵衛 店主 今田景久 
北大路魯山人や志賀直哉、吉田茂など数多くの文化人、政財界人が愛した名店の3代目。老舗ながら、常に客目線を忘れず挑戦を続けている。
「わからないことは、どんどん聞いて。そこから会話が弾みます」

寿司屋もまた、緊張する場所の一つではないだろうか。

「カウンターというのは、みなさん必要以上に緊張されるんですが、お客さんなんですから、もっとリラックスしていればいいんですよ」と「久兵衛」の今田さんは言う。

気になることは質問し、要望も伝えたほうが、店側もより親身に応えてくれる。「久兵衛」には接待客はもちろん、外国人客も多い。グループで来ると、中に一人くらい、生ものが苦手な人やベジタリアンの人がいるという。遠慮せずに申し出れば、火を通した魚や、野菜などで工夫した寿司にも対応してくれるというから驚きだ。

店側の分け隔てないサービスがあるからといって、客がそれに甘えて自分のことを気にしないというのは考えもの。テーブルよりも、隣客との距離がより近くなるカウンター席。しかも、すぐ目の前には新鮮なネタが並んでいる。香水などのきつい匂い、そして、椅子まできてからコートを脱いで埃を立てるなどの行為は控えるべし。

気をつけたいポイント

●箸止めは一本ずつ引いて取る

箸の中央を紙で巻いてある箸止め。何の気なしに破いてはがす人も多いのではないだろうか。この場合、一本を指で支えながら、もう一本を横に引けばスッと抜くことができる。

●握りは横に倒して、側面をはさむと安定

箸でも手でも、握りの楽しみ方はお好みで。いずれの場合でも持ちやすいのが、この方法。握りを手前にコロンと倒し側面を持つと、絶妙な職人技で握られた寿司を崩すことなく、醤油もネタにつけやすい。