最も重要なことは挑戦を呼ぶ場づくり

世の中の消費の鍵を握っているのは女性です。男性より消費の感度が高いことに加えて、子どもの消費は母が、夫・彼氏の消費は妻・彼女が主導権を持ちます。食品や日用品、電化製品はもちろん、マンションや自動車などの大型商品まで、女性を意識した商品が多いのは、そのためです。女性の気持ちや感性がわかる人が商品開発に携わらないと売れません。

さらに、女性の多くは「素人の視点」を備えています。素人とは、経験者やプロフェッショナルではないということ。女性に経験が少ないのは当然です。これまで大きなプロジェクトを任されてこなかったのですから。

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女性幹部の比率は依然として低い

日本の大企業では欧米に比べて女性の登用が遅れています。経営幹部に話を聞くと、その理由は「経験不足」だといいます。大型プロジェクトを任せられるような女性社員がまだ育っていない、というのです。これは「卵か先か、鶏が先か」にすぎません。こうした間違いが起きるのは、日本の多くの大企業が行き詰まりを感じていることと無関係ではないでしょう。

米国のサウスウエスト航空は格安航空会社(LCC)の先駆けとして大成功した企業で、創業者らは銀行家や弁護士など航空ビジネスの素人でした。しかし経験がないからこそ、「常識」を無視した戦略を打ち立てられました。

インディ500のピットインを真似て航空機の地上滞在時間を短縮したり、パイロットや客室乗務員が荷物の積み込みを手伝ったりするなど、その手法は型破り。従業員の募集条件は、「経験不問」ではなく、「経験者不可」。つまり「業界のプロ、お断り」です。プロでは柔軟な発想ができないと知っていたからです。

日本の製造業も、こうした素人の力で成長してきた側面があります。「昔の日本企業は元気があった」といわれますが、それは当然です。当時の主力メンバーは20代、30代の若者でした。ホンダが米国に初めて進出した際も、陣頭指揮をとったのは30代の社員です。なぜなら若い社員しかいなかったから。その苦肉の策が功を奏した。「知らないのに、どうにかなった」というより、「知らないから、どうにかなった」のです。