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関西電力社長(電気事業連合会会長) 八木 誠(やぎ・まこと)
1949年生まれ。京大卒。72年関西電力入社。常務、副社長などを経て2010年6月社長。11年4月に電気事業連合会会長。


東京電力に代わり国内電力会社の雄となった関西電力が、窮地に立たされている。新しい規制基準の下、原子力規制委員会が原発の安全審査を進めているが、国内で最も早く再稼働する原発の一つと見られていた大飯原発3、4号機(福井県)の審査が暗礁に乗り上げたためだ。耐震設計の前提となる地震の大きさに関し、関電と規制委の見解の隔たりは依然、大きい。

関電の主張が認められなければ設備や建物を根本的に見直す必要が生じ、「審査は1年以上かかる」(電力業界関係者)との見方も出ている。関電は原発依存度が4割超と電力会社の中でも高く、原発停止で火力発電の燃料費が膨らみ3年連続の赤字となる見通し。原発再稼働の遅れは関電の存亡に関わってくる。

八木誠社長は工務部など社内の主流を歩み、原子力事業本部長代理も務め原発の知識や経験が豊富だ。2011年には東電の清水正孝社長(当時)に代わり、電気事業連合会の会長に就任した。安全神話が崩れた原発にどう対処し、業界をどう立て直すか注目されたが「東電に中央との交渉を任せきりだったため、政治力を十分に発揮できていない」(経済産業省関係者)。安倍晋三首相は原発再稼働の優先度がそれほど高くはなく、半年程度とされた安全審査の期間はずるずると延びている。

原発の停止が続けば、関電は近い将来債務超過に追い込まれる。対応策は再値上げか増資だ。ただ、景気の腰折れを懸念する政府は再値上げを簡単には認めない方針。増資は、日本政策投資銀行が北海道電力と九州電力の優先株を引き受ける方向で交渉が進んでいるが、「関電は図体が大きく2社よりも実現は難しい」(銀行関係者)。困難な決断を八木氏がどのように下すか、関係者は固唾をのんで見守っている。

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