ミュージシャン 小野瀬雅さん

クレイジーケンバンド(CKB)のリードギタリストで、バンド“小野瀬雅生ショウ”のリーダー。CKB結成当初よりアレンジやサウンドディレクションを担当、楽曲も提供。そのギタープレーは「ハマのギター大魔神」の異名をとる。一方、高級・B級問わず“口福”を求めるウマイモノ食べ歩き家としての顔も。ブログ「世界の涯で天丼を食らうの逆襲」では、都内・横浜はもちろん全国で出合った「ウマウマウー!」を紹介。ファンからはグルメガイドとしても重宝されている。特に天丼には大いにこだわりあり。


 

音楽も食べることも両方とも好きです。最近は食べ物取材の仕事もありまして……。ありがたいことです。ただし、私が目覚めたのはもちろん音楽が先でした。中学3年のときにムーミンズという名前のバンドに入り、最初にビートルズ・バージョンの「ロール・オーバー・ベートーヴェン」をシャウトしました。そのときから現在のCKB(クレイジーケンバンド)、小野瀬雅生ショウなど、私の音楽の人世は続いています。

中学の頃までは好き嫌いが激しくて、野菜全般、玉子、納豆、マヨネーズと、食べられないものがたくさんありました。ですから、親子丼、玉子丼、かつ丼など、玉子のかかった丼類も全部ダメ。天ぷらは食べましたけれど、揚げたてよりも残りものを翌日、甘辛く煮つけたほうが好きでした。思えば天丼の原形ですね。

20歳を過ぎる前に、偏食は直り、またアルバイトを始めたので、稼いだカネで外食するようになりました。その頃からは丼も自家薬籠中のものになっております。

そこで、豊野丼。ここは天ぷらの店ではありません。天丼店です。しかも客席はカウンターだけ。私は「世界の涯で天丼を食らうの逆襲」と題したブログをやっており、天丼をテーマとすることが度々あります。なかでも登場回数の多いのがこの店で、東の横綱と呼んでいます。

豊野丼は、なんといっても安い。しかも、天ぷらもご飯も量がきわめて多い。それなのに油がいいから胃がもたれない。加えて、さまざまなテクニックが駆使されております。例えば、カレー塩など塩の種類が豊富ですし、ねぎの素揚げがトッピングされることもある。かき揚げ丼に至っては生卵が追加されています。多いときは週に1度は来ていました。

東が出たら、西の横綱も外せません。わが天丼番付で豊野丼と同じく不動の地位を誇る、大阪の坂町の天丼の店です。どちらも大切な私のオアシスです。この店には3日連続で通ったこともありました。大阪に引っ越したい、とも思いました。天ぷらにかかっている天だしはすっきりとクリアな唯一無二の味わい。メニューはエビ天が2本のった天丼のみです。通って20年近くたった最近、エビ天が追加できることを知りました。今はエビ天3本の「天丼の3」でお願いしています。

ここに挙げた店に限らず、いろいろなところに行っているのですが、そうですね、私の場合、おいしいものは自分にあげるごほうびです。愛してやまない豊野丼にしても、近くにあるライブハウス「フライデー」出演前は行きません。翌日、よくやった自分へのごほうびとして食べにいきます。そうして自分で自分にごほうびをあげられる現在の私は幸せではないかと考えております。