「あなたの学歴を教えてもらえませんか?」――。なぜ、日本人は学歴にこだわるのか。そんな疑問を各界で活躍中のビジネスマンに投げかけてみた。人事コンサルティング会社・トランスラクチャ代表の林明文氏(50)を直撃した。

「コンサルタントの学歴としては低い」

林明文・トランスラクチャ代表取締役。1987年、青山学院大学経済学部卒。

「学歴? この企画の意味は何? 平和ですね……(苦笑)。今なお、学歴が会社員の中で話題となるならば、それが社会に出てからの実績や活躍と相関関係があまりないからではないでしょうか。少なくとも、大学入学時の偏差値ランキングのようにはなっていないと思います」

人事コンサルティング会社・トランスラクチャ代表取締役の林明文氏(50)は淡々と語る。同社では、主に20~30代の中途を中心に採用活動を行っている。

「エントリーをした人の学歴は当然、見ます。社会人である以上、キャリア(職歴)を何よりも重視します。入学難易度の高い大学を卒業した人がその後、きちんとしたキャリアを積んでいるとは必ずしも言えませんね」

同社は2002年に設立され、現在、社員数は約50人。クライアントの多くは上場企業や中堅企業、成長著しいベンチャー企業、外資系企業などだ。この10数年で実績を着々と積み、人事コンサルティングの会社では、規模は大きい部類になった。

役員のプロフィールを見ると、東京大学の工学部卒や法学部卒、アメリカのジョージ・ワシントン大学大学院の修了者などが並ぶ。そのあたりを尋ねると、こう答える。

「役員会で、学歴について話し合ったことはさすがにない……。この業界に高学歴な人が多いことは事実。30年近くで多くのコンサルタントを見てきたが、学歴と仕事の成果との相関関係はないと思いますね。海外の大学でMBAを終えた人でも、コンサルタントして活躍できないケースは見受けられます」

林氏は1987年、青山学院大学経済学部を卒業した。自らの学歴を、「コンサルタントの学歴としては、低い」と語る。

その口調からは、高学歴なコンサルタントらを率いて一国一城の主をしていることの自信とプライドを感じる。父は京都大卒、兄は東京大卒といった高学歴の家庭に生まれ育っただけに、学歴の、企業社会での「意味」をよく見抜いている。